日々のしおり

感情の病 ー 病は気からの医学②

 前回、東洋医学における「気」について、自然界に遍満するエネルギーであり、人体においては生命活動そのものを支える根本的な働きであるとお伝えしました。

 具体的には、呼吸をしたり食事を摂ったり、あるいは自分の心臓の鼓動を感じることもあるでしょう。これらはすべて生命現象であり、自分に備わった「気」の働きを感じているともいえます。
 そんな「気」の中でも、怒りなどの感情の「気」は、ダイナミックに人体の「気」を動かします。

七情の病

 東洋医学では、怒・喜・悲・思・憂・恐・驚という感情を「七情」と称し、この過不足によって人が病に至ることは、古くから認識されてきました。
 さまざまな病の中でも、七情が関わっているケースは非常に多く見られます。
 特に日本人は、感情をあまり表に出さない文化的背景があるため、感情(七情)が体内でうっ滞しやすい傾向があります。
 その結果、体内に熱(体温計では測れない熱)を生じたり、瘀血などの病理産物が生まれ、やがて具体的な症状として現れてきます。

 患者さんの中には、「身体の内側がなんとなく熱い」と感じたり、「カーッと熱が上がってくる」と表現される方もいらっしゃいます。

一度生じた感情の気は、消えない

 感情は、とても強い「気」です。
 怒りによって、お腹から顔や頭へ一気に何かが駆け上がるような感覚。
 悲しみによって、お腹の奥から込み上げてきて涙があふれる感覚。
 こうした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 こうした感情は、時間の経過とともに収まったかのように感じられます。
 しかし、こらえた感情は消えたわけではなく、内側にとどまり続けます。

 東洋医学独自の腹診術で診ると、そうした状態は、お腹の中に鬱積し、緊張や硬さとして現れているのが確認できます。
 このように緊張して固くなっているところでは「気」が停滞し、その人の体質や生活習慣に応じて、腹部の腫瘍、皮膚疾患、呼吸器、循環器など、さまざまな形で不調として現れてきます。

腹の日本文化

 私は、日本人は「腹の文化」を持つ民族だと考えています。
 胸襟を開くというよりも、「腹を割って話す」と言った方が、より深い本音を語る感覚があるのではないでしょうか。
 実際に、「腹が立つ」「はらわたが煮えくり返る」「腹に据えかねる」「腹にしまう」など、感情や思いをお腹の感覚に結びつけた言葉は数多く存在します。

 東洋医学では、この腹部を重要な診察部位とし、独自の腹診を行います。
 これは単に臓器に触れるというものではなく、全身の状態や「気」の偏り、さらにはその人の内面の状態までも含めて診ていくものです。

 七情(感情)が腹部で鬱積している状態は、「七情内鬱証」として捉え、鍼によって滞った「気」を解放していきます。
 すると多くの場合、「呼吸が楽になった」「体も気持ちも軽くなった」といった変化が自覚されます。もちろん、主訴も軽減もしくは消失します。。

 日々の生活の中では、少しずつ緊張が積み重なるため、呼吸が浅くなっていることにはなかなか気づけません。
 しかし呼吸が浅い状態は、疲れやすさだけでなく、さまざまな心身の不調の土台となります。
 呼吸は、「気」の状態をもっとも素直に表すものです。
 そして同時に、「気」を整える最も身近な方法でもあります。

 ふと気づくと、ため息が増えている…
 そんなときは、すでに「気」は乱れ始めているのかもしれません。

 次回は、「呼吸」と「気」との関係について、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。

終わりに

 当院では、心・体・呼吸を整え、自分自身と向き合う時間として、「自分とつながる呼吸瞑想会」も行っております。
 ご興味のある方は、下記よりご覧ください。

 「自分とつながる呼吸瞑想会」のご案内

 これからも、日々をよりよく生きるためのヒントや気づきをお伝えしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

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