日々のしおり

気をめぐらせる ― 病は気からの医学④

 定期的にご来院いただいている女性セラピストから、こんな質問をいただきました。

 〇気(エネルギー)がこもらないようにするには、我慢しないのが一番でしょうか?
 〇気(エネルギー)が中にこもってしまった時、セルフケアで何かできることはありますか?

 この投稿は、この質問に答える内容となっています。

感情は、なぜ病になるのか

 東洋医学では古くから、感情と身体は切り離せないものとして捉えてきました。

 怒・喜・思・悲・憂・驚・恐――この七つの感情を「七情」と呼びます。七情そのものは、人が生きていれば自然に生まれるものです。問題は、その感情が過剰になったり、長期間抑圧されたりすることです。

 怒りを抑え続ければ呼吸は浅くなり頭や首筋が張り、深い憂いは胸が塞がれたように重くなり、慢性的な恐れは腰や膝から力が抜けていく――そうした身体の声を、東洋医学は感情と気の乱れとして読み解きます。

 症状とは、抑え込まれた感情のエネルギーが、気・血・水の流れの乱れとして身体に現れたものです。

 湧き上がった感情は、消えるのではなく、身体の中に形を変えて残る。これは、施術者として日々クライアントの身体と向き合っていると、実感として伝わってくることです。

気をため込まないための三つの視点

1.自覚――気づきがすべての始まり

「今、自分は何かを我慢している」
「身体のどこかが緊張している」

 そう気づくこと。

 これだけで、気の流れはわずかに変わり始めます。無自覚のままでは、乱れた気は出口を見つけられません。自分の内側に目を向けることが、すべての出発点です。

 呼吸瞑想の実践は、まさにこの「気づき」を育てる営みです。瞑想中に自分の呼吸をただ観ているとき、知らず知らずのうちに「気づく力」が磨かれていきます。

 日常の中で、ふと立ち止まれるのは、その積み重ねがあるからです。

2.観念の解放――思い込みという「気の鎧」に気づく

 私たちは、親や社会から受け継いだ価値観や人生観を、自分のものとして生きています。それ自体は自然なことです。

 しかし、その価値観が「こうあらねばならない」という無意識の命令となり、気の流れを内側から縛っていることがあります。

 東洋医学的に言えば、これは長年の「思(思い悩み)」や「憂」が慢性化した状態とも言えます。

 若いうちは特に、親や社会の期待と、自分自身の感覚との間で、この葛藤が大きくなりがちです。

 受け継いでいくものと、自分自身が新たに切り開いていくものとを静かに見直すこと。その作業が、滞った気を少しずつほぐしていきます。

3.「観る自分」を育てる

 我慢している自分。
 こらえている自分。
 身体や心が緊張している自分。

 そうした自分を、そっと眺めている「もう一人の自分」に気づいていますか。

 この「観る自分」を育てることで、感情の渦に飲み込まれにくくなります。

 問題の只中にいながら、少し離れた視点を持てるようになる。すると、解決のタイミングや方向が自然と見えてくるものです。

 呼吸瞑想を続けていると、この「観る自分」がだんだん育ってきます。

 瞑想の中で雑念が湧いても、それに気づき、呼吸へ戻る――その繰り返しが、日常の中でも「飲み込まれない自分」をつくっていきます。

 その「観る自分」を安定させる錨となるのが、呼吸です。

 呼吸は、つねに「今、ここ」にあります。東洋医学でも、呼吸は気を整える最も基本的な営みとされています。

気がこもってしまったとき――セルフケアの実践

1.身体を動かす――気に出口を与える

 滞った気は、身体を動かすことで流れを取り戻します。

 歩く。走る。大きな声を出す。

 呼吸瞑想会でも実践しているように、声を出すことには、内側にこもった気を解放する力があります。

 東洋医学では、気・血・水は、動くことで流れ、流れることで浄化されると考えます。

 排泄と同じように、気の解放も本来は気持ちのいいものなのです。

 自分に合った「身体を使った解放の方法」を、ぜひ見つけてみてください。

2.ヨーガと呼吸――弛緩から解放へ

 人は、緊張と弛緩の繰り返しの中を生きています。

 しかし現代生活では、緊張が慢性化しやすく、気づかないまま蓄積されていきます。

 当院では、ストレッチやヨーガをお勧めしています。

 ヨーガのポーズは、アクロバットである必要はありません。「気持ちいい」と感じるポーズを、30分程度続けてみるだけでも十分です。

 ポイントは、やはり呼吸です。

 吐く息とともに身体を緩めることで、

 弛緩 → 解放 → 気の流れの回復

という流れが促されます。

 ぐっすりとした睡眠が、その最もわかりやすい例でしょう。

 ヨーガや呼吸法は、意識を保ったまま、その状態へ近づいていく実践とも言えます。呼吸瞑想と組み合わせることで、その効果はさらに深まるでしょう。

3.自然の気に感化される

 人は、見たもの・触れたものに、知らず知らず感化されています。

 暴力的な映像や不安を煽る情報は、自覚のないまま、内側に緊張や気の乱れを生み出します。

 東洋医学では、人は自然の一部であり、自然の気と絶えず影響し合っていると考えます。

 森、山、水辺――自然の生態系には、長い時間をかけて育まれた平和と調和の気が満ちています。

 そこに身を置くことで、乱れた自分の気が整えられていく。

 自然治癒力とは、そうした自然との共鳴から生まれるものでもあるのです。

 忙しい日常の中でも、意識的に自然と触れる時間をつくってみてください。

4.施術者こそ、自分の気を整える

 ここは、セラピストや何らかの施術を行っておられる方へ、とくにお伝えしたいことです。

 施術とは、ある意味で、クライアントの気の乱れを引き受ける営みでもあります。

 技術はもちろん大切です。しかし、それと同じくらい――あるいはそれ以上に――自分自身の気を良い状態に保つことが、施術の質に直結します。

 東洋医学の言葉を借りれば、施術者の気もまた、相手に伝わっています。

 クライアントは、あなたの技術だけでなく、あなたの気そのものに触れに来ています。

 自分を整えることは、自己管理であると同時に、クライアントへの最大の贈り物でもあるのです。

 呼吸瞑想やヨーガ、自然との時間――そうしたセルフケアの実践は、施術者としての在り方そのものを支える土台になります。

まとめ――流れを取り戻すために

 気は、止まると滞り、病となります。川と同じです。

 流れていれば、自ら浄化し、周囲を潤します。

 感じる。
 気づく。
 動かす。
 緩める。
 自然に触れる。

そうしたシンプルな積み重ねが、気の流れを取り戻す道です。

 七情は、抑えるものでも、恥じるものでもありません。

 気づき、感じ、動かし、緩め、自然に触れる。

 気を流してこそ、私たちは健やかでいられるのです。

 呼吸瞑想の実践は、その流れを日々取り戻すための、静かで力強い習慣です。

 当院では、呼吸を通じて自分自身と向き合い「心と体と魂」を統合し、健康で豊かな人生を培っていくための「自分とつながる呼吸瞑想会」を行っております。
 ご興味のある方は、下記よりご覧ください。

 「自分とつながる呼吸瞑想会」のご案内

 これからも、日々をよりよく生きるためのヒントや気づきをお伝えしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 自分の感覚を信頼しながら、呼吸とともに、今日も一歩。

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