日々のしおり

遭遇した副反応の症例 (2)

症例

 症例というにはあまりにも数が少ないので、取り立ててこのような場で取り上げることに抵抗が無かったわけではありません。

 ですが書こうと思ったのは、開業以来30数年の間に、インフルエンザで来院される(往診にも参りました)ことはあっても、予防接種で副反応を起こした方と出会ったという経験がこれまでに無いのです。

 ところが今回は、予防接種によって副反応を起こされた方が、たとえ少数であっても立て続けに筆者の元を訪れたということで、奇異な感覚がしましたので開示することにしました。

 そもそも病院やクリニックに比べて、感染症で当院を訪れる患者さんは、ごく一部にしかすぎません。

 ですので、今回副反応を起こされた方が立て続けに来院されたのは、たまたまかもしれませんし、本当に偶然なのかもしれません。

 予防接種を受けるか受けないかは、個人の判断と責任に任されております。

 筆者は、自分が目にしたことを、そのまま書いておりますので。

 このような点を良く踏まえていただいて、以下をお読みくださればと思います。

副反応が主訴のケース 40代後半 女性会社員

 この方は、元々病院の診断で癌化する可能性のある腫瘍を主訴として受診くださってまして、幸いなことに腫瘍が消失したとのことで一旦当院から離れられまして、時々養生のために受診してくださってます。

 今回この方は、1回目の接種を受けた翌日(2日目)に悪寒と共に発熱が始まり、項から背中にかけてこわばりがつらく、3日目にはさらに熱が上がり、強い悪寒も伴っていたそうです。

 4日目になり、発熱はいくぶん治まったものの、激しい頭痛、吐き気、眼の奥の痛み、めまい、口の中が苦い、食欲が極端に無い、会話するのもしんどい、発熱と悪寒の起伏、といった症状で床から離れることができなかったそうです。

 5日目になり、ようやく何とか起きて歩けるようになったということで、当院に来院されたという経過でした。

 来院時には、4日目の症状が、マシにはなってはいるものの、依然として続いているといった状況でした。

 このような場合は、先ずは最初の病態の病理を把握して、その状態から現在までの変化を追いかけます。

 この最初の状態ですが、悪寒というところに注目できます。

 前回の投稿<20歳代 男子学生>にもありました、この『悪寒』の症状は、ゾクゾクとしてして衣服を重ねても布団に入っても治まらない感覚で、外から病邪=病原菌(ウイルスも含む)がやって来て、体表の陽気のめぐりが阻害された時に起きる典型的な症状です。

 ですので、接種のタイミングで風邪を引かれたとも考えられますし、接種そのものが風邪を引かせることで免疫を獲得する作用があるのか、と言った疑問は残ります。

 ですが、どちらにしても筆者は、当初は桂枝湯証葛根湯証タイプの風邪から始まったと推測しました。

 そしてこの病邪は、罹患した方の元気が弱っていますと、次第に身体内に侵入してきます。

 すると4日目以降の、この女性のような症状が現れて来るのです。

 東洋医学の専門家の方々は、ご理解して頂けると思います。

 (桂枝湯証・葛根湯証・小柴胡湯証に関しては、最後の方に解説しています)

 来院時の女性の病態は、漢方では古典の教科書そのままと言いますか、小柴胡湯証の典型的な病態でした。

 小柴胡湯証というのは、今まさに、病邪が一線を越えて腹部に侵入しようとして、元気とせめぎ合っている状態です。熱の起伏という現象が、元気と病邪がせめぎ合ってる姿、そのままなのですねぇ。(これも後に図示しますね)

 この方は、元々の素体としてをお持ちになっておられましたので、鍼は、内関穴と足臨泣穴、計2穴に置きました。(最後に解説してます)

 ある程度の深さまで病邪の侵入を許してしまったとはいうものの、元気はそんなに弱っていなかったのでしょう、約20分ほど鍼を置きますと、少し頭痛は残ったものの、幸いなことに他の症状はおおむね落ち着かれました。

 先にも書きましたように、本当の病因は分かりませんが、いわゆる外から病原菌(ウイルスも含む)が侵入し、それが今まさに深いところに入ろうとしていたことは確かです。

 街中の小さな鍼灸院ですら副反応を目にするのですから、病院やクリニックの先生方は、さぞや数多く診ておられるのではないかと想像しています。

 予防接種を受けるか受けないかは、個人の判断と責任に任されております。

 どちらにしても、感染を許さない身心の養生。

 また接種を受けても副反応が起こりにくい心身の養生。

 身心、そうなのです、心の養生も非常に大切なのです。

 今後の投稿では、こういったことにも触れながら書き進めていきたいと思います。

 ちなみに、厚生労働省のホームページでは、2021年8月22日までの調査結果を公表しています。

 <新型コロナワクチンの副反応疑い報告について>

 どの程度実態が反映されてるかは分かりませんが、公にされてる事実を知るにはよろしいかと思います。

 

 補 足  桂枝湯証 葛根湯証 小柴胡湯証 の東洋医学的説明

 桂枝湯証と葛根湯証 <画像は、 『腹證奇覧』稲葉克文礼著 『腹証奇覧翼』和久田叔虎著から引用しました。>

 葛根湯はみなさま、ご存じの方も多いと思います。

 2枚の画像を見て頂くとお判りのように、黒い部分で外からやってきた病邪と元気が戦っていますので、この部位で「こわばり」といった症状が現れます。

 外から体内に侵入しようとしているのですから、発熱を促し、発汗させることで病邪を外へ追い払おうとするのが桂枝湯・葛根湯というお薬の作用目的です。(発汗解肌 解熱)

 この状態で解熱薬を用いた場合は、一般的に症状は楽になりますが長引くことになります。

 そして、残念なことに外からの病邪がさらに深いとことに入ろうとする、まさにその時が小柴胡湯証になります。

 元気と病邪が争っている部位=黒いところが、背中から胸元に移っています。

 ここからさらに腹部に病邪が入ってきますと、重篤な病となるのですが(死に至ることもあります)、身体の元気がなんとか踏ん張ってせめぎ合ってる状態が小柴胡湯証です。

 ですから、症状の現れ方も素体によって多彩になります。

 治療としては、その人の身体の状況に応じて、病邪が排泄されやすいところに導くという目的で、鍼を置く処方をします。 (和解 少陽)

 先に書きました通り、足臨泣穴を用いたのは、以下がその理由です。

 下の画像は、足臨泣穴が所属している足少陽胆経という経絡の流注(るちゅう)です。

 足の臨泣に鍼を置くことで、この流注に停滞している痰などの有形の病邪(痰など)が外側の下に降りてきます。

 そして無形の邪(熱など)は、上から抜けて参りますので、身体の元気はその通路(経絡)が通じますので、元気が回復します。

 この方には、再び熱が出て発汗するかもしれませんし、軟便・下痢が現れるかもしれませんし、このまま次第に治まっていくという旨をお伝えして、何か不安に感じることがありましたら、連絡を下さるようにとお伝えしました。

 幸いなことに、連絡がありませんので緩解されたものと承知していますが、2回目接種後に何かあれば連絡するとのことでした。

 

個人的見解 ― 結語

 いわゆる風邪症候群は古来より存在してまして、東洋医学では病原菌(ウイルスを含む)に対抗する免疫力=生命力を妨げている病邪の排泄を促したり、鼓舞することで治癒に向かいます。

 そうしますと、自然免疫を獲得しますので、体質的にも強靭になります。

 いわば、停滞して不調に陥ってる生命エネルギーの流れを、本来のその人個人の流れに戻すことで治癒を促します。

 筆者の立場で現在の感染症をとやかく評価することは出来ないとしても、現在流行していると言われている感染症が、果たしてこのような副反応を引き起こす危険をおかしてまで、予防接種をする必要があるのだろうか、という疑問を個人的には抱いています。

 さらに、マスコミで報道されてる内容と、日常生活をしている肌感覚での危機感とは大きく異なっています。

 筆者の個人的感覚では、インフルエンザが流行している時の方が、よほど肌感覚として危機感がありました。

 読者諸氏は、どのような感覚をお持ちでしょうか。

 

 さらに専門的な内容をお知りになりたい方は、以下をご覧ください。

 太陽病(上)桂枝湯の方意

 太陽病(中)31~32条 葛根湯証 自下利

 太陽病(中)小柴胡湯 方剤吟味

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