日々のしおり

自然の力(2)・・・発揮するために

東洋医学




 前回の続きです。

個人において「天」は、胸から上の部分に相当し、呼吸と意識が「神」でした。

 この自然界を上から、天位・人位・地位と分けて気の変化を捉えたのが『三才思想』と言われるものです。

 それらの「気」の変化と徴候を人体に応用したものが、鍼灸医学です。


 飲食・大小便などの、物質的なものは雨と同じく上から下に自然に降りてきます。

 また感情の気や熱気などの非物質的なものは、下から上に昇って宇宙に解放されます。

 自分自身の身体に自然に訪れる感覚を自覚できないまま、自然に反する生活を送っていると、徐々に不自然な状態=病的状態へと移行するのです。

これら上下の気の交流ルートの一部に停滞が起きると、一部の異常は全体の異常をきたし、一見関係無いように思える他の部位に様々な症状が現れてきます。

例えば、天位から人位・地位へと下るべき気が降りないと、咳や喘息、めまい、だるく疲れやすい、お腹や腰の痛み、足腰の弱り等といった症状が現れます。

また同じく天位から入ってくる飲食物が降りないと悪心、嘔吐、便秘、などの症状が現れます。

人位で気が停滞すると、腐敗を起こしますので癌、糖尿病、膠原病などをはじめ、様々な消化器の疾患を引き起こします。

地位の気が停滞すると足腰が弱ったり腰痛、泌尿器疾患、婦人科疾患、などが現れ、昇るべき気が昇らないと立ちくらみ・めまい・頭がはっきりとしない、健忘、浮腫などが現れます。

 さらに人位・地位で腐敗した汚れた気が天位に上ると、アトピーや目鼻のアレルギー疾患、蓄膿、耳鼻咽喉の疾患、頭痛、痰を伴った呼吸疾患など、数多くの病が生じるようになります。

 飲食の内容、心の状態や周囲の環境の状況などが、様々な形で全身に表現されるのです。
 
 臨床での実際は、このように単純ではないのですが、イメージとしてつかんでいただけたらと思います。


鍼灸医学では、現代のあらゆる疾患は「三才思想」を根本原理として認識し、治療します。

病変部位に囚われず、天・地・人全体の邪気を祓い、気の流れを自然に戻すことで治癒に導くのです。

川の上流にゴミが詰まることにより、症状が下流に現れたとしても、その原因は上流のゴミの詰まりにあるというわけです。

東洋医学の治療とは、痛む部位や現われている症状に原因があるとみなしません。もっと全体を見渡して真の原因を見つけるのです。

人体の気の流れを、その人本来の自然に戻すことに着眼して治療を施しますので、問題を生じている局所に鍼をすることなど本来あり得ません。

鍼灸治療と並行して自然に適った養生を行っていただくと、元々自分自身に備わっている自然治癒力が最大限に発揮されます。

自分に備わっている治癒力が高まると、主訴はもちろん付随する他の諸症状の消失、そればかりか生き生きと生命が輝くようになるのです。

 恋する人がまるで若返ったかのように見える、これこそが本当のアンチエイジングではないでしょうか。

みなさま、自然に適った生活を通じて、自らに備わっている命の力を充実させましょう。


 鍼専門 いおり 鍼灸院

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