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産後の肥立ち(産褥期)

症例

この記事について

 出産後に生じる様々な症状を、東洋医学的に解説しています。

 産後の肥立ち(産褥期)とは

 出産後の母体は、「産後の肥立ち」とか「産褥期」と呼ばれ、妊娠・出産と大きく母体が変化した上に授乳・育児と連続するので、母親は心身ともに不安定になりやすい時期です。(病理は後述いたします)

 Wikipedia  産褥

 身心の素体によって産褥期に、様々な症状が現れます。

東洋医学的見解 ー 産後の肥立ち(産褥期)

 東洋医学的な産後の肥立ちの経過の状態は、下腹部・丹田の状態が目付どころとなります。(下図)

 人体をひとつの袋としますと、陣痛前はその袋がパンパンに膨れ上がった状態です。

 陣痛から出産の過程で母体の元気は全身に満ち、出産で胎児が下りる方向で母体の元気も胎児と一緒に出て行きます。

 たとえれば、大きな袋が下半身で破れ、母体の元気が胎児を押し出すといったイメージです。

 ですから、胎児と一緒に母体の元気もまた出て行ってしまうことになります。

妊 娠 中
出 産 直 前
出 産

 出産後は、上半身には元気が集中して緊張が残り、下半身の元気は空虚となります。

 臨床所見では、出産後からしばらくは、みぞおちが詰まり、下腹部・丹田はポッカリと空洞のように空虚となります。

 丹田の元気が不足するので元気が下に降りず、のぼせやすくなります。(上図)

 ですから、肩首や乳房の凝り、のぼせやすい、動悸、息切れ、発熱などが現れやすく心臓付近が痛むようになります。

 さらにはマタニティーブルー・産褥うつや妄想・錯乱などと言った精神状態の悪化が見られることもあります。

 産褥期の精神状態 ― 東洋医学的見解

 まず「精神」という言葉なのですが、意外に思われるかもしれませんが元々は東洋医学用語です。

 「精」とは、血(けつ)と同意義で物質=肉体を指します。

 それに対して、「神」とは気=心を指します。

 ですから「精神」とは「心と身体」という意味になります。

 東洋医学では、心と体を分けて見ません。

 心と体は、ひとつとして見るのですねぇ。

 産褥期の精神的なトラブルの多くは、出産に伴う大量の出血や体力の消耗などにより、身体に起因して起きる場合が多いのです。

 下図をご覧ください。

 気=心は、物質的な血(けつ)=肉体を基盤としています。

 反対に、血(けつ)=肉体は、気=心によって営まれます。

 いわば気はエネルギーで、血(けつ)は燃料とたとえることもできます。

 この気血がバランスよく調和されていると、心身ともに安定し、健康となります。

  

 ところが出産直後の多くの場合は、下図のように出産に伴う出血と丹田の元気が不足しますので、相対的に気が上りやすく、しかも情緒が不安定になりやすくなります。

 

 

 血(けつ)は、気=心の「おもり=アンカー」のようなイメージです。

 血(けつ)が不足しますので、気=心はちょっとしたことで大きく揺れ動くようになります。

 また少し異なった視点で見てみます。

 下図の金魚を心に例えますと、器の中に水がたっぷりとあると金魚は落ち着いてゆったりと泳いでいることができます。

 ところが下図のように器の中の水が少なくなると、金魚は不安になり少しのことでも敏感に反応して動き回るようになります。

 海で悠々と泳いでいた魚が、水たまりに取り残されてしまい、ちょっとしたことにも素早く動き回る姿と同じです。

 このような状態が長引きますと、心身共に疲弊してしまい、うつ病となってしまいます。

 ですので、産褥期の養生は、とても大切なことになります。

 産褥期の養生

 かつての時代と異なり、現代では食事することができているのであれば、栄養面の心配はあまり必要ないと思います。

 それよりも、現代では核家族化が進んでいますので、母親ひとりの授乳・育児への負担がとても大きく、周囲のサポートがとても大切です。

 かつても今も、出産前に里帰りをし、出産を終え床上げをするまでの間は手厚いサポートがされていたのは、経験に裏打ちされた意味のある大切なことだったのですね。

 現代では、男性も育児休暇を取ることができるような社会になってきていますが、とても望ましいことですね。

 かつての社会は、共同体でしたので地域のみんなで子育てをするという意識がありました。

 母親は、ひとりで何もかもやろうとせず、周囲の人に甘えることを自分に許して心身共に穏やかに過ごすことがもっとも大切です。

 そして、妊娠する前から身体を充実しておき、メンタルを軽くしておくことが産褥期を有意義に過ごすことに繋がります。

 産褥期は、妊娠以前の身心の状態がはっきりと増幅されて現れるからです。

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