古い患者さんからのご紹介で来院された40代男性・会社員の方の症例です。
主訴は、8月ごろから不安感・動悸・首の重さ・胸の痞えといった身体症状に加えて、やる気が出ない・だるさ・楽しくない・人と関わりたくない・口をきくのがおっくう、といった精神的な症状で来院。この先、職場で仕事ができるのかといった不安があるとおしゃいます。
その他、手足の冷えと手のしびれ、食欲不振、小便に勢いが無く尿切れも悪く、残尿感もある。寝つきが悪く夢を見ることが多いなどといった多彩な随伴症状も現れておられました。
問診で得た情報から、仕事上の我慢を続けてきたことで体内の熱が鬱して手足に流れず、鬱した体内の熱が体液を蒸しあげて粘度の高い痰を形成し、この痰がみぞおちに詰まって一連の症状を引き起こしていると判断。
患者さんには、鍼灸治療で症状は改善しますが、根本的な原因である職場環境の改善がされないと再発する旨をお伝えしてから、鍼治療を行いました。
用いた鍼は、3本。
治療を終えて帰宅後、びっくりするほど楽になられたとメールがあり、翌週来院されたときに、「職場の役職に労働環境の改善を申し出たところ、ご本人が驚くほど上司が理解してくれ、労働環境も改善された」とのことでした。
結局この方は、2週間2回の治療で完治されました。
なぜこんなにも早く良くなられたのかを、いくつかまとめてみます。
1.ご自身の心身に起きていることを十分理解されたこと。
2.ご自身の心身を守るために、自分に課せられた仕事の軽減を申し出、受けた上司に理解があったこと。
3.病歴が浅く、しかも精神薬を服用していなかった。
以上の点により、わずか2回の鍼治療で完治されています。
当ブログでも何度か取り上げていますが、精神薬を服用されていますと治療経過は長引く傾向にあります。
人が生きていれば、心の情動が動きます。
情動はエネルギーですが、これを精神薬によって体内に押し込めてため込み、いきなり精神薬を中止しますと、押し込められていた情動エネルギーがリバウンドして、一気に吹き上がってきますので、大変つらい症状が現れます。
このような理由から、長く精神薬を服用された方の鍼治療は、体内に鬱した情動エネルギーを開放しつつ減薬をし、同時にそもそも情志が鬱した原因を患者さんと一緒に探り、特定して解決へと導きます。
ご自身の心に起きたことは、現実的な問題点を見つけて解決するのがとても大事です。
お薬を服用すると、問題の先送りすることになってしまい、現実がさらに苦しくなります。
ですので、今つらいと感じている自分としっかりと向き合い、できうる限り薬に頼らないことをお勧めいたします。
コメントを残す