この記事について
鍼道 一の会 基礎医学講座でお話しした内容に、加筆・訂正したものです。天人合一とは、「自然界と人間は同じ気の理法によって動いている」という世界観です。
私たちは普段、人間と自然を分けて捉えています。しかし東洋医学ではそう考えません。
春には芽吹きがあり、夏には成長があり、秋には収穫があり、冬には静かに蓄える。自然界がそうであるなら、人間の身体もまた自然界と同じように変化していると考えるのです。
黄帝内経を読んでいると、何でもかんでも天人合一で無理に説明しようとしているように見える箇所が多々あります。特に五行理論の展開は、臨床に合わないところが多くみられます。しかし、大切なのは細かな記述ではありません。古典が本当に伝えたかったことは、「自然界の気の動きと人体の気の動きは一つである」ということだと私は理解しています。
そして、その関係は対等ではありません。自然界が主であり、人間は従です。
太陽が昇れば目が覚め、太陽が沈めば眠くなる。これは自然の法則です。
ところが現代人は、その法則に逆らう生活をしがちです。夜遅くまで明るい場所で活動し、季節に関係なく冷暖房に囲まれ、自然の変化を感じる機会も少なくなりました。飲食もまた、季節にそぐわない野菜や飲料であふれています。
もちろん便利で豊かな生活には大きな恩恵があります。しかしその一方で、身体は自然とのずれを抱えやすくなっています。東洋医学が見ているのは、そのずれなのです。
例えば春になると調子を崩す人がいます。イライラしやすくなる人もいます。頭痛が増える人もいます。
また、梅雨になると身体が重くなったり、むくみやすくなったりします。それは自然界の気の変化に身体がついていけないからです。
季節が変わったのに、ストレスや不適切な飲食などにより自分の気の流れが変わらない。自然界は移ろい流れているのに、自分だけが取り残されている。そういう状態が不調として現れてくるのです。
日本特有の気候風土に培われた衣食住の文化形態が壊れつつあること。さらに、肉体労働から頭脳労働へと労働形態が大きく変化していることも、不調の原因として考えられます。
私は毎日、空を見ます。
風を感じます。
気温や湿度の変化を感じます。
月齢も見ます。
植物の様子も観察します。
なぜなら、それらはすべて人体とつながっているからです。
それらを日々感じながら、患者さんが不調となった時とその時の天候を思い浮かべ、脈をはじめとする身体が表現しているものを読み取るのです。
東洋医学を学ぶということは、自然を見て、自分の心と体で日々感じて実感することです。
そして自然の気の変化と、自分自身の心と体の変化をしっかりと観察することがとても大切な基本となります。。
天人合一とは単なる理論ではありません。毎日の暮らしの中で術者自らが体験するものです。
空気の匂い。風の強さや感触。月の満ち欠け。植物の成長。
そうした自然の営みを感じながら生きること。
その積み重ねの中で初めて、東洋医学の理論は術者の中で生きた智慧へと変わっていくのです。





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