ブログ「鍼道 一の会」

【問診から見えてくる、症状の奥にあるもの】

酒井 つぐみ

鍼灸をする上で、その人の体質や病態を知るために重要な手がかりの一つ、「問診」。
先日行われた「鍼道一の会」の気血津液弁証の講義をもとに、今回は問診について書いてみました。

一の会では、まず患者さんに問診表を書いてもらう。
その問診表をもとに、まずその人の病が「虚」なのか「実」なのかを考えていく。
虚実とは、正気(健康を支える力)と邪気(病へ向かわせる力)の兼ね合いを表すもの。「虚」は正気の不足が問題となり、「実」は正気に大きな不足はなく、邪気が盛んであることが問題となっている状態を表す。

例えば、汗をかいたあと。排便のあと。生理のあと……。
身体から何かを出したあとに、「症状が悪化する・ぐったりする」のか、「症状が軽くなる・スッキリする」のか。
そういった問診を通して、その人の正気と邪気の状態をざっくりと把握していく。

また、お話の内容だけでなく、話し方、声のトーン、声量なども重要な情報になってくる。
問診とは、単に「何の症状がありますか?」と聞いて、その答えを書き取る作業ではない。
患者さんの言葉や話し方、その背景にあるものまで含めて、その人の身体の状態を読み取っていく作業なのだと思う。

そして、症状そのものだけではなく、
「どういうときに悪化するのか?」「どういうときに改善するのか?」
これらをはっきりさせることも大切。
こうした情報は、身体の「気・血・津液」の偏りを考える上でも役に立つ。
たとえば、
――ストレスがかかったときや、根を詰めたときに症状が悪化する。
身体がギュッと緊張すると、気の巡りも悪くなりやすい。
そのため、「気の停滞」が症状に大きく絡んでいるのかもしれない。
――雨の日や梅雨など、湿度が高いときに症状が悪化する。
こうした場合は、身体の中の余分な水分や「湿」の停滞が、症状に絡んでいる可能性がある。
このように、症状が「いつ、どんなときに変化するのか」を見ていくことは、病態を考える上で大きな手がかりになる。
そして、こうした情報は、その人に合った養生を考える上でも役に立つ。

さらに、問診項目で当てはまる症状を、一つ一つバラバラに考えるのではなく、すべての症状の関連性を意識する。
すると、肩こり、腰痛、頭痛、消化器の不調……。
一見すると、それぞれ別の症状に見える。
けれど東洋医学では、それらを一つのつながりとして捉えていく。
内臓や筋肉、骨……。
いろんなパーツごとに名前があって、いろんな場所に症状が現れる。
でも、いろんな場所で症状としてそれぞれが声をあげていて、本当は全部つながっていて、一つなんだな、と私は思う。
だからこそ、様々な症状の根になっているところを探り、そこに一本の鍼をする。
すると、芋づる式に、いくつもの症状に変化が現れる。
一つの症状だけを追いかけるのではなく、その症状を生み出している身体の根っこを捉える。

同じ「気の停滞」で起こる病でも、人それぞれ身体への出方が違う。
それは、その人がもともと持っている正気と邪気の状態が違い、それぞれの生活習慣や飲食の好みなど、背景も違うからだと思う。
同じように「肩がこる」という症状があったとしても、その症状だけを見て、誰にでも同じように鍼をすればよいわけではない。
なぜその人に肩こりが起こっているのか。
その人の身体全体を見ながら、その背景にある病態を考えていく必要がある。

だからこそ、東洋医学では症状だけを見ていても、その人自身のことは分からない。
もちろん、問診だけですべてが分かるわけではない。
その人の身体に実際に触れて診ていくことが、とても大切になる。
問診で得られた情報と、実際に触れて感じる身体の情報。
それらを重ね合わせながら、その人の身体が今どういう状態にあるのかを考えていく。
そうやって少しずつ、その人なりの人生の歩みと身体のつながりや、症状の意味を見出していく。

問診は、症状を聞き出すためだけ医療アンケートではない。
その人の全体を理解するための、大切な入口なのだと思う。
そんなところが、東洋医学の奥深さであり、面白さだなあと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA



reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

▲