この記事について
第7回 「鍼道 一の会」基礎医学講座の一部内容の公開です。病の原因となることを患者さんと共有すると、治療結果が早く現れるだけでなく、患者さんの身体に起きていることに意識的になれます。
治療によって病を治すのではなく、治って頂くのが「一の会」の姿勢です。相談役:金澤 秀光
こちらの動画の内容は「病因病機」=病になる原因とその経過について、東洋医学的な視点からお話させていただいた講座から一部抜粋したものです。
今回の内容は、前回からの続きで、「病因の分類」についてお話させていただきました。
病気の原因をさまざまな視点から分類することを通して、「病そのもの」を異なる視点から捉えることができるのではないかと思います。
心と身体、人体と自然、社会環境…身近なところでは、日常生活や自他の関係性
(自分と他者、家族、組織、社会、環境、自分をとりまく世界)
についてどう捉えるのか。
そもそも「病の本質的な原因とは何なのか」、私自身改めて考えるよい機会となりました。
一般的な病因の分類
はじめに、東洋医学における、病気の原因の分類についてお話させていただきました。
病気になる原因(病因)は、体の外からの影響によるものである「外因」、体の内からの影響によるものである「内因」にわけることができます。
体の外からの病因を「外因」と呼びます。
主に気候の変化が原因であり、六淫(風邪・火邪・暑邪・湿邪・燥邪・寒邪)や、疫癘(いわゆる感染症)がここに含まれます。
「内因」は身体の内側、例えば、七情の失調(人の感情の過不足)が原因で、体のはたらきがバランスを崩してしまい病気になること、があてはまります。
「外因」「内因」以外を「不内外因」と呼び、飲食不摂・房事過多・労逸(過労や運動不足など)など、生活習慣(不摂生)や外傷などが含まれます。
古典の分類
また、昔の人々は、どのように病をみていたのか。古典での分類も比べてみました。
こちらは、もっとシンプルな陰陽の区分けになります。
「夫れ、邪の生じるや、或いは陰に生じ、或いは陽に生ず、
其の陽に生ずる者は、之を風雨寒暑に得、
其の陰に生じる者は、之を飲食居処、陰陽喜怒に得る」 (素問・調経論篇62)
当時の自然(気候変化)と、それに対する人間の営みとの関係性が、とてもダイレクトに伝わるなあ、と思ったのですが、みなさまはいかがでしょうか。
病気の原因が、人体の外から来る、内から来る、という分け方でもあるのですが、自然の理の中で暮らしている感覚をより強く感じます。
また、金澤先生の病の分類について、お話を伺ったものもまとめてみました。こちらは、より一層、「病とどう対峙するか」という視点が強く感じられる気がいたします。
陰陽の太極で身体と自然の関係をとらえているところ、ベースは同じです。
「外因」には、主に外気の身体への影響、「内因」には飲食と情動(人の心の動き、感情)が入ります。
これは、同時に、
内因=「自分でなんとかできること」
外因=「自分でなんとかできないこと」
という分類であるともいえます。あとは、それ以外=「自分では対策できないこと」です。
つまり、逆にいえば、内因と外因については、「何らかの対策ができる」ということになります。
この分類の仕方に、金澤先生の治療者としての視点が強く反映されているなあ、と私は感じました。
病因に対する対策・養生
具体的な対策としては、外因に対しては、季節の流れに沿う生活をして、養生する。
内因に対しては、飲食に気をつけて、心穏やかに、「欲」にとらわれることなく過ごす。
それでも、病となってしまった場合は鍼灸などの方法により、自分の力でなんとかできるところまで整える、という治療になるわけです。
前回の臨床講座で講義してくださった、永松先生は、外界からの影響の対策として、周易のことをお話してくださったり、内と外との関わり方、瞑想など、自分の中のバランスを整えるための方法、太極のとり方を、さまざまな角度から、実践する具体的な方法まで教えてくださりました。
あくまで自然が中心にあり、自然の理に沿わない営みを行うと、病気になる…。
ということは、外邪の影響を受けるか否かについても、自分次第というわけです。
内因は、人の「欲」ということばも印象に残りました。
「欲」はひとが生きるための原動力でもあると思うのですが、抑えすぎても、過剰となっても、心身を傷つけてしまう原因となる。
自然の変化と同じく、人の営みも、それ自体が悪いわけではなく、過不足が問題なのですから、「欲」と上手にお付き合いして、バランスをとれるようになれば、大部分の病を未然に防ぐことができるということになります。
昔の人々の養生の心がけのように、日々の生活の中でのちょっとした工夫や、心身を整える習慣は、実は健康への近道なのかもしれません。
【文責 川村 淳子】
七情に関しては、こちらをご参考に ↓
あらゆる病の原因としての『感情の抑圧』について 稲垣 順也 会長
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