前回は、<素問・厥論45>に目が留まったことがきっかけで、膝陽関の穴性と言いますか、どのような病態の時に、どのように使えばいいのか、興味が起きてきたことを書きました。
そこでまずは経穴そのものを調べてみることにしました。
参考書は、中国鍼灸穴位通鑑 青島出版社 です。
初版が1994年ですので、もうずいぶんと古いものですね。
当時世界最強と言われた書物で、中国に現存する古今東西の文献をすべて網羅したものです。
中国って、すごいですよねぇ~、国家規模でこういうことやるのですから。
新型コロナウイルスの中医薬による治療にしても、このような文献に関しても中国には太刀打ちできませんよね。
まあ、それは何と言っても、中国と日本の医療制度が大きく異なるので、仕方ないとも言えばそれまでなのですが。
さあさて、その中身を抜粋して翻訳して記してみます。
中国鍼灸穴位通鑑 P1642
膝陽関
出処
陽関、在陽之陵泉上三寸、犢鼻外陥者中 <鍼灸甲乙経>
別名
1.寒府 <黄帝内経素問・骨空論>
2.関陽、関陵 <備急千金要方>
3.一名陽陵<鍼灸聚英><古今医統大全><鍼灸大成><鍼灸逢源><鍼灸指南>
穴名釈義
1.陽関は、膝関節の外側で陽に偏重する。ゆえに陽関と名づけられた。
また陽陵は陽経に在って陰精に通じ、膏沢を化して関節の中に注ぐところである。陵は関節の深いところの骨が高く隆起して外に現れることに象る。ゆえにまた陽陵の名づけられた。
2.穴は胆経に属し、位置は陽陵泉の上三寸、膝関節の外側陥中に相当する。外は陽と為す。よって陽関と名づけられた。
3.本穴はまさに膝関節の外側である。よって「陽関」と名づけられる。陽側の膝関であることの意味を指示したものである。
4.本穴は、<甲乙経>に最も早く見られ、称して「陽関」と爲しているが、督脈の腰陽関とは別のところであり、最近では「膝陽関」と称せられ、足少陽胆経に属している。
<甲乙経>第三巻では、「陽陵泉の上三寸、犢鼻の外、陷なる中に在りと言う。
以下、省略
部位 省略
帰経と穴性
1.鼠瘻の寒熱は、還りて寒府を刺す。 <素問・骨空論>
2.膝の外廉痛み、屈伸すべからざす、經痺れ不仁するは、陽関これを主る。 <鍼灸甲乙経><備急千金要方><医心方><普済方>等
3.梁丘、曲泉、陽関は、筋攣し、膝屈伸を得ず以て行くべからざるを主る。
4.膝の外廉痛み、屈伸すべからず、脛痺れて不仁す。 <外台秘要>
5.風痹不仁、膝痛みて屈伸すべからずを主る。 <古今医統大全><鍼灸大成><鍼灸指南><中華鍼灸学>
6.膝頭紅腫し、屈伸すべからず、鶴膝風の毒等の証 <循経考穴編>
7.風痹不仁し、股膝冷痛し、屈伸すべからず。 <類経図翼><勉学堂鍼灸集成>
8.以下省略
読者諸氏、さっと目を通して頂いてどのようにお感じになられましたでしょうか。
「一の会」では、身体を時空間と捉えますので、このままではこの経穴の位置的意味がもう一つ明確になりません。
次回、もう少しこの<中国鍼灸穴位通鑑>の中身を吟味してみましょうか。
続きます。
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