ブログ「鍼道 一の会」

134.太陽病(下)176∼177条 虚労病 炙甘草湯方意 

〔炙甘草湯方〕

甘草(四兩炙) 生薑(三兩切) 人參(二兩) 生地黄(一斤) 桂枝(三兩去皮) 阿膠(二兩) 麥門冬(半升去心) 麻仁(半升) 大棗(三十枚擘)

右九味、以清酒七升、水八升、先煮八味、取三升、去滓、内膠消盡、温服一升、日三服。一名復脉湯。

甘草(四兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 人參(二兩) 生地黄(しょうじおう)(一斤) 桂枝(三兩、皮を去る) 阿膠(あきょう)(二兩) 麥門冬(ばくもんどう)(半升、心を去る) 麻仁(まにん)(半升) 大棗(三十枚、擘く)

右九味、清酒七升、水八升を以て、先ず八味を煮て、三升を取り、滓を去り、膠(きょう)を内れて烊消(ようしょう)し盡(つく)し、一升を温服し、日に三服す。一に、復脉湯(ふくみゃくとう)と名づく。

  前回、炙甘草湯は、桂枝去芍薬湯に人参、生地黄、阿膠、麦門冬、麻子仁を加えた湯液であると記しました。

 今回新しく登場しました、地黄、阿膠、麦門冬、麻子仁の薬能を先ずは記します。

 

地黄 

 中医学では、生地黄と酒で蒸し晒した熟地黄とに分けて薬能が記されている。

・生地黄 気味 甘苦 寒 

中薬学:清熱滋陰 凉血止血 生津止渇

・熟地黄 気味 甘 微温

中薬学:補血調経 滋腎益精 

薬徴:血証及び水病を主冶するなり。※血証…出血・貧血などの血の方から来る証

新古方薬嚢:味甘寒血の熱を涼し出血を止めよく肌肉を潤ほし養ふ、故に腎気丸、三物黄芩湯、黄土湯、膠艾湯、炙甘草湯等に用いらる。此れ等は皆血を治する所にあるが故と見るべし。

阿膠 気味 甘 平
中薬学:補血 滋陰 止血 清肺潤燥
新古方薬嚢:味甘平肌肉の傷れを治し急を緩るむることを主ると。故に出血を止め煩を去る。

麦門冬 気味 甘 微苦 微寒

中薬学:清肺潤肺・止咳 養胃生津 清心除煩 潤腸通便

新古方薬嚢:味甘平咳を鎮め咽喉の通りを好くし、熱を去る。特に虚弱の者の咳き込み、微熱等を除く効あり。

麻子仁 気味 甘平
中薬学:潤腸通便・滋養補虚
新古方薬嚢:味甘平内熱によりて燥き固まれるを潤ほしやはらぐるの効あり。

 

 ざっと見ますと、地黄、阿膠、麦門冬、麻子仁は陰気を増して潤すことが分かると思います。

 地黄と阿膠は、ともに止血作用がありますので、水を泥に化して精血の流れを堰き止めるといったイメージでしょうか。

 あと煎じ方に、清酒七升と水八升で煎じるとありますので、陽気もまた鼓舞していることが分かります。

 また人参は「心下痞堅 痞寇 支結を主治す」でした。心下に水を集めてくるのですね。

 そうしますと、陰液・陰血を心下に集めて桂枝去芍薬湯と清酒で強力に上焦に持って挙げ、心肺を扶けようとする姿が見えてきます。

 <中医臨床のための方剤学>では、益気滋陰、通用復脈として、心陰陽両虚・肺気陰両虚に用いていますので、病態としては把握できると思います。

 178条は、原文と読み下し文のみの掲載です。

 これで太陽病(下)は終わり、いよいよ次回からは陽明病です。

 

一七八

脉按之来緩、時一止復来者、名曰結。又脉来動而中止、更来小數、中有還者反動、名曰結、陰也。脉来動而中止、不能自還、因而復動者、名曰代、陰也、得此脉者必難治。

脉之を按じるに来ること緩(かん)、時に一止(いっし)して復た来る者を、名づけて結と曰う。又、脉来ること動にして中止し、更に来ること小數(しょうさく)、中に還ること有る者の反って動ずるを、名づけて結(けつ)と曰う。陰なり。脉来ること動にして中止し、自(おのずか)ら還ること能わず、因(よ)りて復た動ずる者を、名づけて代(たい)と曰う、陰なり。此の脉を得る者は必ず治し難し。

 

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