※ ・底本は、現在最も一般に流布している明の趙開美刻『傷寒雑病論』東洋学術出版
社を用いています。
・解説は、錯簡・後人の注釈が挿入したものと思われるところは省いています。
ただし、後人の挿入であっても有益と判断したところは、解説を加えています。
・解説は、古方、後世派、中医学の折衷で解釈しています。
最初は、細かく解説しながらゆっくりと参ります。
先ずは第1条から3条まで目を通してください。
初学の方は、原文と読み下し文を突き合わせながら読んでください。
漢文自体は、大変簡素なので当初は時間がかかりますが、すぐに原文の文法に慣れます。
【一条】
太陽之為病、脉浮、頭項強痛而惡寒。
太陽の病為(た)るや、脉浮、頭項強痛して惡寒す。
【二条】
太陽病、發熱、汗出、惡風、脉緩者、名為中風。
太陽病、發熱(ほつねつ)、汗出で、惡風し、脉緩(かん)なる者は、名づけて中風と為(な)す。
【三条】
太陽病、或已發熱、或未發熱、必惡寒、體痛、嘔逆、脉陰陽倶緊者、名為傷寒。
太陽病、或いは已(すで)に發熱し、或いは未(いまだ)發熱せずとも、必ず惡寒し、體痛(たいつう)、嘔逆(おうぎゃく)、脉陰陽倶(とも)に緊なる者は、名づけて傷寒と為す。
【解説】
第1条は、太陽病の綱領、つまり定義づけですので暗記するのが宜しいです。
太陽病というのは、脈が浮いて、頭や項が強ばる様に痛んで悪寒がしますよ、 ということですね。
ここに、脈浮、頭項強痛、悪寒の順に症候が書いてあります。
これは、一般的には頭項強痛、悪寒などの自覚症状に先立って、脈が浮いてくると解釈することが出来ます。
もちろん太陽病以外の裏証でも、脈が浮くことがあります。
だからこそ、臨床で脈を診て脈が浮いておれば、まずは表裏をきっちり弁別する必要があります。
きっちり弁別するために色々と考察してみましょう。
まず太陽病ではなぜ、脈が浮いてくるのでしょうか?
外邪が体表を襲ってくるので、正気が体表に赴くがためですね。
つまり正邪抗争の場が、非常に浅い肌表だからです。
これを病位と称します。
陽証=太陽病→少陽病→陽明病。
↓
陰証=太陰病・厥陰病・少陰病、の順に病邪が伝変します。
一般成書とは、病位の順番が異なりますが、「一の会」では、六経病を空間的・時系列的に読み解くと、この順に病邪が伝変すると理解しています。
では、なぜ上焦部位に症状が現れ、しかも項が強ばって痛むのでしょうか?
『傷寒論』は、文字通り風寒の邪が人体を襲った場合について書かれたものです。
風寒の邪とは、風邪と寒邪が一緒になったものですね。
風邪の性質は、高いところを襲います。
ですから陽の部位、背部の足太陽の上を襲うのですね。
寒邪は、収斂、つまり縮ませるので引きつり・強ばり、まるで肩が凝ったかのような症状が現れます。
そして風寒の邪が、衛気を傷って居座るので悪寒を生じる訳です。
ちなみに風熱の邪は、陰の部位、前面の足陽明の上を襲います。
その際にも、衛気を傷るので少し悪寒の現れる場合があります。
ですが風寒の邪のようにはっきりと表れることはありませんので、他の症候と照らし合わせて、うまく噛み分けてください。
湯液の場合、寒熱を間違えると、かなり悪化しますし長引きますのでしっかり弁別してください。
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