行住坐臥という言葉があるように、本来行止第六と臥起第七は文字数自体も少ないことから纏めても良いと思われます。
敢えて分けたのは行止は動、臥起は静動の終始と考えての事でしょうか。この辺りの考えの深さは未だ分かっていません。
敢えて分けたのは行止は動、臥起は静動の終始と考えての事でしょうか。この辺りの考えの深さは未だ分かっていません。
寝相は悪い方が、日中の歪みを矯正するとも言われています。素体の虚実によるものもありますので、どちらとも言い難いと思うのですが、本質的には養生要集の言う事が正しいと考えています。
養生要集には
「内解には次のように書かれている。寝るときは真っ直ぐに四肢を伸ばし、自然に安らげる状態が良い。横向きに寝たり、うつ伏せや身体を曲げたり、傾けたりしないこと。五臓を常に考えていれば、神と形(内外)をはっきりとしておく必要がある。
寝たいときには、人定の時(20時〜21時、戌刻)が良く、亥刻(21時〜23時)は入るのは良くない。この時は、天地人万物が皆一旦眠り、死ぬ時で、霊魂の世界に通じる。
人が皆死んでいるのに自分だけ生きているのである。それを過ぎて寝るのであれば夜中、子刻(23時〜01時)に入ってからの方が良い。この時間には天地人の万物は全て眠り、寝るまでが1つの生々流転の流れである。気が生まれ出てくると、人と同じように寝たり呼吸したりするのではなく、四時八節に随って春夏は鶏鳴時に、秋冬は遅く必ず日光を浴び、逆にしてはならない。身体を損なう」
千金方には
「春は暗くなったら寝て、早く起きるようにするべきである。夏や秋には昼寝をし、夜になったら床に着き、早く起きるようにすべきである。冬は早く寝て、遅く起きることを心掛けるべきである。こうすることが、身体の為になる。早く起きると言っても、鶏鳴前に起きるのではない。遅く起きると言っても日の出後に起きるのではない」
又云う
「寝る場合は春と夏は東を向き、秋と冬は西を向く。これが一定の法則である。」
又云う
「日が暮れてから寝るときは、いつも習慣として口を閉じる事。口を開けば気が体内から失われ、又邪悪なものが口から入ってくる。」
又云う
「膝を屈めて横向きに寝ると、気力が増して、横向きでも真っ直ぐ寝るよりも良い」
又云う
「眠る時に縮まっても構わず、伸ばしていても気にしないようにすること。伸び伸び寝ると、鬼や物の怪、邪悪なものに夢で襲われやすいので、これを避ける為に縮めて眠り、目覚めたら身体を伸ばすこと」
又云う
「一人前の男性は、頭を北枕にして寝てはいけない。寝る場合は、天井の梁のしたにいてはいけない。寝てしまってから灯りをつけっぱなしにしておいてはいけない。魂魄や六神が休まらず、愁いや恨みが多くなる。」
又云う
「歩く時は、鵞の王様のように足を運び、眠るときはライオンのように眠ること。(右脇を床につけ、膝を曲げる姿勢)」
又云う
「寝るときは先ず心を休めること。そうすれば寝る事ができる」
又云う
「人が寝るときは、一夜のうちに5回寝返りを打ち、いつも転がっていこうとする。」
又云う
「人は寝てしまってから口を開けてはいけない。長く続けていると糖尿となり、血色が悪くなる。」
又云う
「昼眠ってはいけない。人の気力が取られる。」
又云う
「夜寝るとき、頭を覆わないようにすると長寿を保つ。」
又云う
「夜寝てから耳の穴を吹いてはいけない。耳が聞こえなくなる。」
沈中方には
「人がうなされたときには、灯りをつけて呼んではならない。必ず厭死するから暗闇で呼ぶ方が良い。又、近づいて急に呼んではいけない。(厭死とは夢で襲われて死ぬこと)」
又云う
「眠ってから、足を高いところにかけたり、高いところを踏んだりしてはいけない。その状態がしばらく続くと、腎水を患い、房事に四象を来たし、足が冷える。」
又云う
「夏に屋根の上で寝る場合は、顔をさらして寝ないようにしないといけない。顔の皮膚に癬を自分から作る事になる。別名面風」
又云う
「人の頭の近くに、「暖房器具を置いてはいけない。」毎日火気を受けていると、頭が重くなり、眼が充血し、その上鼻が乾く」
原文及び書き下し文
養生要集云、内解曰、臥當正偃、正四支、自安。無側、無伏、無劬、無傾。常思五藏内外昭明。欲臥、无以人定時加亥。是時、天地人萬物皆臥為一死、与鬼路通。人皆死吾獨生矣。欲臥常以夜半時加子、是時天地人萬物皆臥寤為一生。生氣出、還不与人同臥息常随四時八節、春夏鶏倶與秋冬晏起必得日光。无逆。逆則傷。
養生要集に云う、内解に曰く、臥するには当に偃を正し、四肢を正し、自ら安んずべし。側するなく、伏するなく、劬しむなく、傾くなかれ。常に五藏を思りて内外を昭明せよ。臥せんと欲するに、人定の時を以てし、亥を加うるなかれ。この時天地人の万物皆臥して一度死を為し、鬼路に通ず。人は皆死なるに吾のみ独り生なるなり。臥せんと欲すれば、常に夜半の時、子を加うるを以てせよ。これの時、天地人の万物皆臥せるまま寤め一度生を為す。生気出ずれば還た人と同じく臥息せず。常に四時八節に随い、春夏には早く起き鶏と倶に與きよ。秋冬には晏く起き必ず日光を得よ。逆らうなかれ。これに逆らえばこれ則ち傷るなり。
千金方云、春欲冥臥早起。夏及秋欲偃息侵夜乃臥早起。冬欲早臥而晏起。皆益人。雖云早起、莫在鶏鳴前。雖言晏起莫在日出後。
千金方に云う、春は冥くなりて臥し、早く起きんとせよ。夏に及び秋には偃息して侵く夜にして乃ち臥し、早く起きんとせよ。冬は早く臥して晏く起きんとせよ。皆人を益す。早く起くと云うと雖も、鶏鳴の前にあるなかれ。晏く起くと雖も、日出の後にあるなかれ。
又云、人臥春夏向東、秋冬向西、此為常法。
又云う、人の臥するには、春夏は東を向き、秋冬は西を向く、此れを常法と為す。
又云、莫臥常習閉口、口開即失氣又耶惡從入。
又云う、暮れて臥すときは、常に習いて口を閉じよ。口を開けば即ち期を失し、又邪悪従りて入るなり。
又云、屈膝側臥益人氣力勝正偃臥。
又云う、膝を屈して側臥すれば人の気力を益し、正しく側臥するに勝る。
又云、睡不厭踧覚不厭舒[凡人舒睡則有鬼者魘耶便故、遂覚時乃可舒耳。]
又云う、睡りては踧ること厭わざれ。覚めては舒ぶること厭わざれ。[凡そ人、舒睡すれば則ち、鬼物魘耶の便をえることあるが故に、遂くなるなり。覚めたる時乃ち舒すべきのみ。]
又云、大夫頭勿北首臥。臥勿當梁脊下。臥訖勿留燈燭。令魂魄及六神不安多愁怨。
又云う、大夫は頭を北首して臥する勿かれ。臥するに梁脊の下に当たる勿かれ。臥して訖りては燈燭を留むる勿かれ。魂魄及び六神をして安ぜず、愁怨多からしむ。
又云、行作鵞王歩眠作師子眠[右脇着屈膝]
又云う、行くには鵞王の歩をなし、眠るには師子の眠りをなせ[右脇を地に着け、膝を屈するなり]
又云、凡眠先臥心得臥身。
又云う、凡そ眠るには、先ず心を臥せて、身を臥することを得。
又云、人臥一夜作五覆恒逐更轉。
又云う、人の臥するときは、一夜に五覆をなし、恒に更轉逐うなり。
又云、訖勿張口。久成消渇、及失血色。
又云う、人は臥し訖らば、口を張く勿かれ。久しくして消渇を成し、及た血色を失う。
又云、不得晝眠、令人失氣。
又云う、晝眠ることを得ざれ、人をして氣を失わしむ。
又云、夜臥勿覆其頭得長壽。
又云う、夜臥して其の頭を覆うこと勿くんば、長壽を得。
又云、夜臥當耳勿有孔吹耳聾。
又云う、夜臥しては当に耳に孔吹ある勿かるべし。耳聾す。
枕中方云、勿以冬甲子夜眠臥。
枕中方に云う、冬の甲子の夜を以て眠臥すること勿かれ。
千金方云、凡人厭勿燃明喚之。定厭死不疑、闇喚之吉。亦、不得近而急喚。
千金方に云う、凡そ人の厭せるときは明を燃やしてこれを喚ばうこと勿かれ。定ず厭死を疑わざれば、闇にてこれを喚ぶが吉し。亦、近づきて急に喚するを得ず。
又云、人眠勿以脚懸蹋高処。久成腎水及損房足冷。
又云う、人眠りては脚を以て高処を懸蹋する勿かれ。久しくして腎水を成し、及た房を損ない、足冷ゆ。
又云、夏不用屋上露面臥。令面日不喜成癬[一云、面風]。
又云う、夏屋上にて面を露して臥することを用いざれ。面の皮膚をして喜んで癬を成さしむ[一云う、面風]。
又云、人頭辺勿安火爐。日別承火氣、頭重目精赤、及鼻乾。
又云う、人の頭辺に火爐安く勿かれ。日別に火氣承くれば、頭重く、目精赤く、及た鼻乾く。
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