ブログ「鍼道 一の会」

性を養う(10)居処第十

医心方

性を養う(10) 居処第十
養生篇第十は住むところに関して。
    身体の外の第一防波堤としての衣服の次は第二防波堤としての住むところ。

 この時代は、気候や自然現象の影響を身体感覚で感じとれる人も多かった為、様々な注意点を示しています。

 実際にはその地域の気候、季節を衣服や住むところだけではブロックしきれませんが、微に入り細に入り気をつけることで、備えをしています。顕在意識で感じなくとも身体や心は感じているので、軽々しく扱わず少しでも気になることは実行しておくに越したことはありません。
養生要集に云う
「河圖帝視萌には、天地の原理に逆らうのは凶、と書かれている。天の日月の運行に従うのは良い。春夏には山の高いところで楽しみ、秋冬には標高の低いところで、深く隠れるように住む。こうすれば利益があり、福が多く、老いても寿命に極まりがないようになる。」
千金方に云う
「住居はキラキラと着飾ったり、華美なものにならないようにすべきである。着飾りすぎると人を貪欲にし、志を損なう。ただ質素で、そして清潔にして雨風や暑さ、湿気から身体を守る事ができれば充分なのである。」
又云う
「人の部屋は必ず周りがピッタリと閉ざせるようにし、細い隙間もないようにする。すきま風が入ってきていると、長い間を経て中風になる。(中風については巻三の第十〜第二十三まで参照。)」
又云う
「室内に風が入っているのを感じたら、我慢して長い間坐っていてはいけない。必ず立って風を避けること。」
又云う
「生け垣の北にベッドを敷いてはいけない。生け垣に面して長い間、考え事をしてはいけない。良くないことが起こる。」
又云う
「ベッドに昇る時には、先ず左足の屨を脱げ。」
又云う
「家にいる時や外出中に急につむじ風や暴風雨、濃霧に出会うのは、全て龍や鬼神の行動によるもので、それが通り過ぎているのである。そんな時は室内に籠もってよく戸を閉ざし、香を焚いて静座し、心を安らかにしてこれを避け、過ぎ去るのを待って、その後に戸外へ出る事。そうしないと怪我をしたり、或いはその時は何事もなくても後で良くないことがある。」
又云う
「家の中に経典や神の像があれば、そこへ行ってまず、それを拝み、その後に目上の人に挨拶するようにすべきである。」
又云う
「神廟の前を通るときには、身を慎み、軽々しく入らないようにすること。入ったら恭しく敬い、見回したりしてはならない。厳めしい君主に対するように振る舞うこと。そうすれば幸せを授かる。」
延壽赤書に云う
「寝床はできるだけ高くすること。高ければ地の気が身体にまで届かず、鬼がすったり犯したりしない。鬼の気が人を侵す場合は、いつも地面から上に向かって入ってくるからである。」
原文及び書き下し文
 養生要集云、河圖帝視萌日違天地者凶、順天時者吉。春夏樂山高処、秋冬居卑深藏吉。利多福老壽元窮。
 養生要集に云う、河図帝視萌に曰く、天地に違う者は凶、天に順う者は吉なり。春夏には山の高処を楽しみ、秋冬には卑きに居りて深く藏るる。吉利多福にして老壽窮まりなし。
 千金方云、凡居処不得綺美華麗、令人貧婪無厭損志、但令雅素浄清潔、免風雨暑湿為佳。
 千金方に云う、凡そ居処は綺美華麗なるを得ざれ。人をして貧婪厭くことなからしめ志を損なう。ただ雅素浄潔にして、風雨暑湿を免れしむるを佳しと為す。
 又云、凡人居正之室必須周密、勿令有細隙致有風氣得入久而不覚使人中風。
 又云う、凡そ人の居止の室は必ず周密なるを須い、細隙あらしむるなかれ。風氣の得て入るあるをいたし、久しくして覚えずとも人をして中風とならしむ。
 又云、覚室有風勿強忍久坐必須起行避之。
 又云う、室に風あるを覚えなば、強いて忍びて久坐することなかれ。必ず起行してこれを避くべし。
 又云、凡墻北勿安床勿免向坐久思不祥起。
 又云う、凡そ墻北に床を安くなかれ。面向して坐し久思することなかれ。不祥のこと起こる。
 又云、上床先脱左足。
 又云う、床に上るは必ず左足を脱げ。
 又云、凡在家及行卒逢大飄風暴雨大霧者此皆是諸龍鬼神行動経過所致宜入室閉戸焼香静坐安心以避待過後乃出。不尓損人或當時雖未有若於後不佳。
 又云う、凡そ家またばみちに在りて、にわかに大飄風、暴雨、大霧に逢うは、これ皆これ諸龍鬼神の行動、経過の致す所なり。宜しく室に入り戸を閉ざし、香を焚き静坐し、心を安んじて以て避け、過ぐるを待ちて後乃ち出ずべし。しからずんば、人を損ない、或いは時に当たりて未だ苦あらずと雖も、後に於いて佳ならず。
 又云、家中有経像者欲行来先拝之、然後拝尊長。
 又云う、家中に経像あれば、行き来たりて先ずこれを拝し、然る後、尊長を拝せんとせよ。
 又云、凡遇神廟慎勿輙入々必恭敬不得挙目恣意顧膽當如対厳君焉乃享其福耳。
 又云う、凡そ神廟を過ぐれば、慎みて輒入するなかれ。入れば必ず恭敬し、目を挙げ意を恣にして顧眈することを得ざれ。当に厳君に対するが如くなすべし。乃ちその福をうけん。
 延壽赤書云、南岳夫人云、臥床務高々則地氣不及鬼吹不于鬼氣侵入常依地面向上[床高三尺六寸而鬼氣不能及也]
 延壽赤書に云う、南岳夫人が云わく、臥床は務めて高くすべし。高ければ則ち地気及ばずして鬼吹干さず。鬼氣人を侵すは常に地面より上に向かう。「床高三尺六寸にして鬼氣及ぶ能わざるなり。」

          一の会

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