ブログ「鍼道 一の会」

少陰病について

傷寒論

 今月の鍼道・一の会『東洋基礎医学講座』では、私・稲垣は、『中医学』の「不内外因」と『傷寒論』の「少陰病」を題材にしました。

 この記事では、冬という季節柄、傷寒論の少陰病について、講義内容を紹介してみたいと思います。
 対象は、専門家を想定しております。

 少陰病とは、病証としては「陽虚」あるいは「陰虚」の人が、外寒の影響を受けて「ひたすら寝たがっている」という状態です。

 学校教育では、陽虚と言えば「冷え」、陰虚と言えば「ほてり」というイメージが付きやすいかと思いますが、それだけでは臨床の指針としては心もとないことでしょう。

 陽虚とは、体内の陽気(エネルギー)が不足して、津液(水)を自力では動かせなくなってきている状態です。

 陽虚について考える時、この、自力では動かしきれなくなった津液を視野に入れることが重要だと思います。
 ここを押さえれば、陽虚の症状である未消化便や体の冷え・しびれ・動かしにくさなどや、少陰病の症状である活動性の低下は、一人の人間に併発し得ることとして納得できるかと思います。

 更に、他の併発症状についても、理解や類推がしやすくなるでしょう。

 一方、陰虚とは、陰液(血や津液)の漏出が続いて不足に陥り、自分の陽気(エネルギー)を落ち着けられなくなってきている状態です。
 そのため、ほてりや乾燥と共に過度な興奮が生じ、睡眠の質も低下して、結果的に日中の活動性が低下してしまいます。
 よって、陰虚の人を治すには陰液の漏出を止める必要がありますし、漏出が見られないなら、それは陰虚ではないかも知れないのです。

 以上、陽虚と陰虚について掘り下げてみると、普段から鼻水やむくみなどが出やすい人は陽虚を経由して、不正出血や尿崩症などを起こしやすい人は陰虚を経由して、少陰病に陥る恐れのあることが分かります。

(注:鼻水は、本来は出るべきでないところから水があふれている状態ですので、漏出ではなく、むしろ停滞を問題視すべき症状となります)
 現在、インフルエンザの流行が心配されており、インフルエンザは東洋医学で言うところの「外寒」に基づく疾病ですから、上記のような症状のある人たちが感染した際の危険性はよく認識しておくべきでしょう。

 なぜなら、「少陰病」は病の最終段階の一つであり、そこでは生死が問題となるからです。
 「ひたすら寝たがる」という少陰病の定義は、実はそれなりの危機的状況を表現しています。
 逆に言えば、東洋医術に生きる我々や皆様が、日々の臨床で、陽虚傾向あるいは陰虚傾向の人を改善し続けることは、インフルエンザの被害の軽減に貢献する貴重な行為でもあるはずです。
 同業の皆様がこれまでなさってきた貢献、あるいはこれからなされていく貢献が、どうか感謝で彩られたものであるよう願っております。

一の会

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