【三一〇条】
少陰病、下利、咽痛、胸滿、心煩、猪膚湯主之。方九。
少陰病、下利し、咽(のど)痛み、胸滿し、心煩するは、猪膚湯(ちょふとう)之を主る。方九。
少陰病で下痢をし、咽痛と胸満、心煩と、主に上焦に症状が現れています。
この場合の下利は、寒熱のどちらなのでしょうか。
新古方薬嚢には、「腹中冷えて腹下るものには適せず」とあります。
しかもこの条文には、四肢厥冷などの虚寒の症状が記されていませんので、恐らく熱痢ではないかと考えられます。
猪膚とは、豚の皮の上皮を薄く去った内皮です。
中薬学には記載が無く、<新古方薬嚢>には「味甘寒、熱を除き傷れを補い中を調ふ。故によく下痢咽痛心煩する者を治す」とあります。
そして猪膚湯方をみますと、白蜜と白粉(米の粉)を用いています。
なんとなく病態がつかめません。
全体として、下痢をしていても、潤して冷やして急迫を治める・・・
そもそもどのような経過をたどって少陰病になり、どのような素地でこのような病態が生じるのかが分かりません。
単に元気が無く寝たがるような状態の者を、少陰病としているのかもしれないと思うのですが、どうでしょう。
この後に続く、甘草湯・桔梗湯・苦酒湯・半夏散・半夏湯も同じです。
〔猪膚湯方〕
猪膚(一斤)
右一味、以水一斗、煮取五升、去滓、加白蜜一升、白粉五合、熬香、和令相得、温分六服。
猪膚(ちょふ)(一斤)
右一味、水一斗を以て、煮て五升を取り、滓を去り、白蜜(はくみつ)一升、白粉(はくふん)五合を加え、
熬(い)りて香ならしめ、和して相(あ)い得せしめ、温め分かち六服す。
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