ブログ「鍼道 一の会」

四季と人体(1)導入

公開動画

 この度、「鍼道 一の会」基礎医学講座の内容の一部を公開いたします。

 内経医学は、天人合一・天人相応思想がその基本中の基本でありまして、伝統医学に法ってこの医学を行おうとするに際しては、暦は必須のものとなります。

 この暦を元にしてあらかじめ予測を立て、実際に術者の五感で自然界の気の変化を感じ取った上で病人の変化を捉えます。

 治病とは、病人の気の流れを自然の気の流れへと回復させることです。

 その暦の基礎を、誰にでも受け入れやすく、しかも理解しやすく川村淳子先生が説いてくださってます。

 これからシリーズで、みなさまに順次公開してお伝えいたします。

 どうか、みなさまのお役に立ちますように!

                     代表 金澤 秀光

 

 

 【動画内容】(川村 淳子先生)

 それでは、24節気のおはなしをさせていただきます

 

 今も昔も、日本人は季節の変化に寄り添いながら暮らしてきました。

 日々の暮らしの中に溶け込んでいる風習には、春・夏・秋・冬の季節ごとの行事やお節句があって、私たちはそれを今でも身近な文化として、大切に受け継いでいます。

 幼い頃から親しんだこれらの風習は、暑い寒いといった体の感覚だけではなく、私たちに季節の変化を感じること、自然に親しみ寄り添う方法を、ゆるやかに教えてくれています。

 

 みなさんは、志村ふくみさんという染色家の方をご存じですか?

 

 志村ふくみさんは、自然の植物を煮出して、その色を糸に染めて、着物などを仕立てていらっしゃる方なんですけれども…。一目見たら引き込まれてしまうような、きれいな色を染め上げられるんですね。

 

 その方が本に書かれていたことなのですが…。桜の花の色、あの淡いピンク色を出すのに、桜の花を煮出して染めても、その色にはならないのだそうです。

 

 桜の花びらで染めた糸は、新緑の緑色になる。

 これ、すごい不思議だなあ、て思ったんですけれども。

 では、桜のピンク色を出すためには、桜のどの部分に染めたら、どうしたら、いいのかなあ、って思いまして。

 

 …みなさんは、どう思われますか?

 桜の木のどこかの部分を使ってピンク色に染めるってなったら、どの部分を使ってみようと思われますか?

 

 そうです、志村さんは、桜の花のピンク色を出すことにも成功されてるんですね。

 

 正解はですね、私、びっくりしたんですけども、冬の丸坊主になった木の幹。

 冬枯れの桜の木の皮、樹皮を煮だして、染めたら、この春のピンク色が

出るのだそうです。

(※ ベストは、桜の花のつぼみが芽吹く、その直前ぐらいのタイミングだそうです。

そのあたりの樹皮や枝からは、ほんとうに美しい桜色を紡ぐことができるそうですよ。)

 このお話をきいて、すごく私はびっくりしたのですが…。

 

 私はこのお話を聞いて、冬の桜の木がすごく好きになったんですけども、冬の桜の木の中は、もう、春のあの桜色でいっぱいなんだなぁと思って。

 この樹の中にね、桜の花の色がいっぱい溜まってきて、春先に、こうふわーっとピンク色があふれ出すような感じで蕾が芽吹く…。

 あれは、突然出てくるわけじゃなくて。

 ずーっと、冬の間にためてためて準備してきたものが、滲み出すようにこう、ふわーっとあふれるんですよね。それが一気に花開いたのが桜の花なんだろうなあ、と。

 ちゃんと草も木も知らない間に次の季節の準備をしてるんだなあ、と思って。

すごく素敵だなーって思ったお話なのです。

 

 ところでお話は変わりますが、日本人ってなんでこんなに四季を大切にする民族なんだろうなって思うのですが、皆さまはどう思われますか?

 これについては、大きな理由を二つあげることができると思います。

 

 日本人が四季を大切にする大きな理由。

二つとも、とてもシンプルなことなのですが…。

 

 一つ目は、四季がはっきりしてること。

 緯度や経度の事情により、他の国よりも四季がはっきりと感じられる国であるということが挙げられるかと思います。

 

 もう一つは、日本の主食が関係いたします。

 お米を育てる文化、農耕社会だからですね。

 

 農耕社会というのは、人々の暮らしそのもの、それがもう生活のベースであり、生活の基盤で、当時の人々にとって、お米は採れなかったら生きるか死ぬかみたいな問題に関わります。これはもう、命そのものが関わっていたということ。

このように考えていきますと、四季を大事にすることは命を大事にすることにつながってくる。

 

 つまり、田畑の状態を左右する季節の変化を知ることは、生死に関わる大事なこと。

日本人にとって、それを知るためにの目安になるものも、当然大切にしてたわけですね。

 

 ここで繋がりますよね。

 いつ種を植えたらお米が育つのか。

 刈り取りの季節はいつ頃になるのか。

 この季節の移り変わりを図るための物差しとして生み出されたのが暦、今でいるカレンダーでありこれから説明させていただく季節の区分である24節気だったんですね。

 

 では、みなさまは、二十四節気。この言葉をご存知でしょうか。

 二十四節気は、季節を表す暦の言葉なのですが、一緒にみてまいりましょう。

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 まず夏至・冬至はご存知だと思います。

 夏に最も昼の長い日を夏至、最も夜の長い日を冬至と言います。

 昼と夜の長さが同じ時を春分。

 秋の昼と夜の長さが同じ日を秋分と言いますね。

 この四つの春夏秋冬、4つの季節の真ん中に置くことで、まず一年を春・夏・秋・冬の4つの季節に分けました。

 それをさらにこれをまた6等分することで一年を合わせて24分割して、季節の変化の物差しとしたことが、二十四節気の成り立ちになります。

 

 この暦は、日本では平安時代から使われていたと、私が読んだ資料では書いてありました。

 元々は中国の春秋戦国時代の黄河流域今の華北地方、農業の目安として中国で古い時期から使われていたと言われてるみたいです。

 日本も昔から暦はあって日本書紀に、百済から暦の博士を招いて

暦を入手しようとした記録が残っております。

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 そして夏至・冬至・春分・秋分この四つを合わせて二至二分(にしにぶん)という言葉で呼んでいます。

 これは春夏秋冬の中心に置かれていて、この仕組み自体は、古代中国で、今から3000年以上も前からあったと言われています。

 

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二至(夏至・冬至)

 この図をご覧になってくださいね。

 まずこれを1年としたら半分に分けます。

 夏至と冬至を軸にして2至で半分。

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四季 = 二至(夏至・冬至) +  二分(春分・秋分)

 

 これに加えて、春分と秋分の2分でさらに割ることによって、4分割にします。

 これで、春・夏・秋・冬、「四季」となりました。

 

 次に四立(しりゅう)を加えます。

 これも聞きなれない言葉かもしれませんが、中身は多分ご存じだと思います。 

 立春・立夏・立秋・立冬この四つを合わせて四立と言います。

 立春は、春の始まり、言い換えると、冬至と春分の間を表す言葉です。

 立夏は、夏の始まり、春分と夏至の間、

 立秋は、秋の始まり。夏至と秋分の間、

 立冬は、冬の始まり。秋分と冬至の間、をそれぞれ表しています。

 

 二至二分に、四立を合わせ、これを「八節」と言います。

 すこし、続けざまに知らない言葉が出てきて混乱されるかもしれないです。

けれども、中身はそれぞれご存知の言葉だと思います。

 先ほどの4分割した、夏至・冬至・春分・秋分、これを、合わせて二至二分。

 これをさらに細かく分けるため、春夏秋冬の始まりの言葉であるこの四立を合わせまして、八節と呼びます。

 

 さて、図を見てみましょう。

 

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八節 = 二至二分(夏至・冬至・春分・秋分) +  四立(立春・立夏・立秋・立冬)

 先ほどの二至・二分で割った四分割して割った四季。

 それに四立を足します。

 それぞれの中間に立春・立夏・立秋・立冬。

 四季の始まりであり、次の季節との真ん中の境目にある

言葉を入れてちょうど八分割。これで八節ができあがりました。

 

 1節は45日。

 これを15日ずつに三分割さらにして「24節気」が生まれました。

 

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24節気

 ちょっと細くなるんですけど、先のこの図を大きくしてさらに細かく三分割に分けます。

 なんでこんなに細かく分けるのかなと思うんですけど、農作業の目安にするには、もっと細かな暦が必要だった、ということなのでしょう。

これをもっともっと細かく分けた、「七十二候」という言葉もあるんですけども、それはまた改めて説明させていただきますね。

 

 

 暦が季節・自然の動きを知るためのツールである、というとことを知っていただいた上で、最後に人間サイドの生活について少し考えてみたいと思います。

 

 人にとっての生活は「衣食住」が基本ですね。

 これに対して季節の変化が影響するということを、まずちょっと書いてみたいのですけども、

 衣というのは季節の温度変化。

 食は先ほどの農業。

 住はそのまま住むところですね

 

 これに対して日本人はどんな工夫をしてきたかと言うことを考えてみましょう。

 まず「住」についてです。

 農耕民族である日本人は遊牧民と違って住む所っていうのはそんなに移動することはできないんですね。

 暑くなったからといって、北の方に移動してしまったら、田んぼを放っていかなきゃいけない。それはできないから、住は変えられないものとして工夫する。

 まず冬、これは温めればいいけど、夏ですね、問題は。

 日本は湿気と暑さが大変な国でしたね…。

 それを何とかしなきゃいけないってことで、どちらかと言えば夏に重きを置いた住居に工夫がこらされました。

 例えば、木造建築をあげることができるかと思います。

 風を通しやすく、湿気を逃しやすい、障子や襖や土の壁。

 紙・木・土を使ったおうちを建てて、そこに住むことにしたんですね。

 

 この生活についての「住」以外の、残りの二つ、「衣」「食」については、季節と一緒に変えていける部分なんですね。

 例えば季節の旬のものを食べたり、衣替えをしたり、具体的に言うとそういう形で季節に合わせて工夫しやすいところ。

 例えば、下駄とかスリッパとか、ああいうものを、夏に履きますよね。

 こういったものは、下焦から湿を逃すのに最適である。

 東洋医学の視点から、わたしたちが見るとそういう風に捉えることができるのではないでしょうか。

 

 つまり変えられないことに対しては、できるぶんの工夫をして、そのままに。

それ以外の変えられるところを自然界の変化に応じていくスタイル、というのが、

日本の文化のベースになっている…ということが言えるのではないかと思います。

 

 それでも、生活スタイルを調節しても、身体の生理機能が季節の変化に応じられなかった場合には、病気になるわけですね。

 こういう事を昔の人たちは体験から知っていたのだと思います。

 

 日本の文化には、私たちに身近なところで言うと、お節句などがあります。

 これは後々、詳しくご説明したいと思ってるんですけども、節句は季節の変わり目。

 ちょうど節目になる時に、人の体が調子を崩しやすいっていうを昔の人達はよく知っていて。これは、身体の調子を崩しやすい季節の節目を越えて、次の季節を迎える準備をするっていうことを行事に落とし込んだ文化なんですね。

 行事に参加する人たちは、意味が分かってなくてもいいのです。病気の知識がなくても。文字を知らなくてもいい。子供たちやおとしより、働き盛りのおとなたち、みんなが楽しく行事に参加することで、みんなの命を守っていく。

これは、昔の人が生きるために生み出した生活の一つの知恵だったと言えるんじゃないかなと思います。

 昔は、今よりも子供が亡くなったりとか、人が死にやすい環境だったので、健康に生きるための術を伝える行事であったのだと思います。

 

 話は元に戻りますが、四季のある日本に住んでる以上、季節の変化による体調不良はその暦が重宝された昔の時代も今の時代も本当は変わらないんじゃないかなって思います。

 

 これから私たちは、季節によって特有の病気があること。

 人によっては体調を崩しやすい季節があることを勉強してまいります。

 

 これらは自然界の気の変化についていけなかったりとか過剰に反応すること

で起きてしまう現象ですね。

 

 つまり、これを防ごうと思ったら、逆のことを行えばいいんですよね。

 自然界の気の変化と人体の生理的変化。

 これについては、今日、午前中に江見先生がお話の中で、仰ってましたよね。

 春夏秋冬の人の身体と気の向き。

 あのイメージを思い出していただけたらいいなって思うんですけども、外側の…環境の変化と自分の身体の中の変化。

 その調和を図れば問題が解決するんじゃないか。

 季節の変化による体調不良がもっともっと防げるんじゃないかっていう風に思うんですね。

 

 

この季節による身体の変化と四季の変化、外気の変化と自分の中の気の変化の調和を図れば問題は解決するんではないか。

 この自然界の変化を大きく捉えようとするのが四季であり、二十四節気なのですから。

これらを意識しながら皆さんと一緒に勉強することで、まずは、自分自身の体調の変化を整え、他人の体調の変化に気付き、そして、病を治すことにつなげていけたらいいなと思っております。

 

 以上で二十四節気の説明を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

 はい、終わりですよ。

 

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