はじめまして。川村と申します。
「疫病」についてのおぼえがきを投稿させていただきます。
年末に課題のためにまとめたもので、コロナに絡めて書いたものではありませんが…。
「伝染病」=「疫病(癘気)」ってなんだろう?
むかしのひとはどう捉えていたのかな?
そんな疑問を感じていらっしゃる学生さんの叩き台に丁度よいかもしれません。
ベテランの先生方にとっては、いろいろと拙いところもあるかと思います。
わたしは、これを調べているときに「これは、傷寒論、読まんとわからん…。うっわ、どーしよー。」と思いました。
昔のことを調べていると、たくさんの大変な局面を超えたところに、いまの医療の知識があり、いまの私たちが生きていることを実感いたします。
この時代はいまよりも医療が発達していなかったぶん、もっともっと大変なことがたくさんあったのだと思います。
それでも。
いのちの扱い方も、それに対して思う気持ちも、きっと辿るところは変わらなかったんじゃないだろうか、と思う今日この頃なのです。
そのことに勇気をもらえる気がしたのでした。
「疫病について その1」
「癘」とは、日本において「はやりやまい」「疫病」「疫癘」1)のことを指し、場合によっては、「癩病(癩菌の感染による慢性伝染病)」2)を意味する。
古くは7世紀に書かれた『日本書紀』において、「疾疫、疫気(えやみ、えのやまい)」の言葉がみられ、江戸時代においては、「天然痘(疱瘡)」「麻疹(はしか)」「水疱瘡(水痘)」「コロリ(コレラ)」など死亡率の高い伝染病を意味し、一度流行すると多くの人々が命を失った。3)
「癘」は、この漢字一文字で「ころす」との意味もあり4)、これらの伝染病が、時代や国を超えて人々に非常に恐れられる存在であったことが窺える。
「癘気」とは、すなわちこの「癘」の気のことであり、読み方は「れいき」とも「らいき」とも読むことができる。
『詳解・中医基礎理論』によると、「疫癘の気」として、「伝染性が強く、毒性が強烈な邪気のことをさす」5)とあり、他の呼び方として、「瘟疫うんえき」「癘気れいき」「戻気れいき」「毒気」「異気」「乖戻かいれいの気」6)などと称されること、続いて「これには、疱瘡、ジフテリア、疫痢、猩紅熱など現代でいう激烈な伝染病、あるいは感染中毒型の重篤な病症が包括される。」7)「疫癘の気による病には、急激な発病、重篤な病状、症状が類似、伝染性が強い、などの特徴がある」8)との解説がある。
そこで、今回はこの「癘気」について、関連する文献を集め、その源流について探ってみることにした。
現代社会において、伝染病がウィルスや細菌、寄生虫によって起こる病気である、ということは一般常識となっている。
しかし、「顕微鏡が発明される以前は、「瘟鬼」「瘟神」といった鬼神、或いは疫氣などによると廣く信じられていた。」9)
このように市井の人の中では、これら鬼神の存在が未だ広く信じられていた時代に、「疫氣」すなわち「癘気」を病原体としてはっきりと認識し、その学説を「戻気学説」として発展させたのが、明代の末、清代の初頭に現れた呉有性(呉又可ゆうか)であった。
→ 「疫病について その2」に続く。
【参考文献】
1)新村出(編):広辞苑第二版,岩波書店,1973,p2339
2)4)貝塚茂樹ほか(編):漢和中辞典,角川書店,1980,p740
3)くすりの博物館 http://www.eisai.co.jp/museum/history/0700/sub0100.html (参照 2020-1-19)
5)6)7)8)劉燕池・宋天彬 他(著),浅川要 他(訳):詳解・中医基礎理論,東洋学術出版社,2001,p143
9)穂刈浩之:<書評> 余新忠著『清代江南的瘟疫與社會–一項醫療社會 史的研究』,当陽市研究(2005),64(1):p107-114,2005,
http://ichinokai.info/cms/wp-content/uploads/2020/04/JOR_64_1_107.pdf(参照2020-12-27)
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