本稿は、「一の会」年会員専用サイトで、永松周二先生が投稿してくださっていたものを転写したものです。
公開いたしまして、みなさまのお役に立つことを願っております。
龍砂開合六気鍼法について
五運六氣という思考モデルを用いた、龍砂医学流派が新しい鍼刺療法を創設した。
開闔六気鍼法は刮目するような効果で広い関心を集めている。
国家中医薬打点局龍砂医学龍派の代表伝承人である顧植山が伝授したこの方法は五運六氣開闔樞理論を鍼灸で運用し成功したものである。
論を進修する過程において、国家中医薬打点局の龍砂医学龍派代表伝承人である顧植山氏が伝授、開発した三陰三陽開合樞理論を元に、全身に開闔樞の太極図を描いて三陰三陽の病機に基づいて相応部位に施鍼し、理想的な療効を得ている。その為、この方法を龍砂開闔六気鍼法と呼んでいる。
当該療法は五運六氣六経の思考モデルを実用化し、できるだけ簡単にしながら、易学を用いて療効を測る事、そして効果の速さに着目しながら、臨床応用範囲を広げていった為、内科、外科、婦人科、小児科などの各科の疾患に用いる事ができ、臨床による反復検証を経て再現性を高めている。
理論的根拠としては、顧植山が<黃帝内経>の「陰陽離合理論」に基づき、“顧氏三陰三陽開合樞図”及び“顧氏三陰三陽太極時相図”を書き出して、人体の三陰三陽六気の盛衰に関する運行リズムを明確に示した事である。
鍼刺の要点、詳細な定位
人の身体はどこにでも太極があり、我々は人体の任意の一点を中心にして三陰三陽開合変化の円をつくって、頭頂部が最も有効で簡便で実用的だとした。
この外、常用されるのは腹部や仙骨部(火鍼多用)、病巣部等にも応用している。
医師患者の体位
“聖人南面而立”であり、医師、患者はどちらも南方に面して天人相応の理想状態を取る。
但し太極は円運動である。
医師を主体として見ると、左昇右降となる。陰陽開合樞はこれに対して相対的に捉えて、太陽と太陰はどちらも開であり通じている。
少陽と少陰はどちらも樞で通じている。
陽明と厥陰はどちらも闔で通じている。
従って正反に向かうと全ての効果が高い。
相対的な原則としては腹が陰であり、背中は陽に取る。
医師鍼刺手法
患者に向かった状態で見ると、鍼刺区域は常にクロックワイズ(時計に準じて)、皮に沿って施鍼し、特段の補泻の技術はない。
最近顧植山氏は鍼を指で代用する押圧手法を採用しているが同様の療効が得られている。
鍼刺中心点の意義と方法
中心点は病機が向かう部位となり、引経鍼と呼ばれる。
六経によって鍼刺の時を理解する。
顧氏開闔枢理論によると、六経欲解時は病気の判断に重要な根拠となる。
取経
一般的には医師は主要象態と次要象態によって2〜3部位に施鍼する。その他の注意事項は一般的な鍼灸と同様である。
臨床例
主訴:頻尿
名前:毛○ 女性 48歳
2019年7月10日バイクに乗車時転倒して腰背部を打撲し、左股関節部の可動域が制限される。
頻尿を訴え、昼夜共に30分に1回、酷い場合は睡眠に影響が出る。
頭鍼治療1回(太陰、太陽)、施術後の夜小便で起きる事無く、4回の治療後全快する。
ソース
360doc個人図書館
求本中医
品略
山東泰山療養院
永松先生 総 括
総括すると、どの部位であっても図を用いて施鍼すれば相応の効果があるという論だと思います。
この論拠を黃帝内経にとっていますが、そうであれば、経穴も準拠すべきですが、恐らく近年の頭皮鍼と合わせて流行らせようという意図の方を大きく感じます。
周易の観点と黃帝内経の観点を合わせて考えると、脈診の記載が簡便すぎ(中医は基本全体の脈状のみ)、症状の緩解メインで現代中医の範囲を超えるものではないと考えます。
簡便と簡易をはき違えている所が惜しい限りです。
方薬に関しては一定の納得度はありますので、ここから経穴を考える方が有効に感じます。
附 記
三因司天方は龍砂医学の処方
龍砂医学とは、江陰龍山、砂山地区を源として、元代の著名な学者である陸文圭が基礎を作ったもの。
明、清時代の医家の蓄積を経て、周辺地区で発展し、蘇州南部地区に大きな影響を与えた学術流派である。
<黃帝内経>の運気学説を重視し、三陰三陽“開合枢”理論を運用して腎命理論による軟膏、養生、未病治などを行っているのがこの学派の共通特徴である。
陸文圭 墙東という雅号で呼ばれていた。西漢末、北海人王君公が王莽の権力の乱世にいた時、牛の仲介業をして隠れていた。当時の人は“隔世の墙東王君公”と呼んだ。
墙東とは<後漢・逢萌伝>に書かれている言葉で、後に市井の言葉で“墙東”とは隠居する地を指すことになった。百家に精通し、天文、地理、律歴、医薬、算術等の学問を知る知識人。代表作は<墙東類稿>
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