【一五七】
傷寒汗出解之後、胃中不和、心下痞鞕、乾噫食臭、脇下有水氣、腹中雷鳴下利者、生薑瀉心湯主之。方二十。
傷寒汗出でて之を解するの後、胃中和せず、心下痞鞕(ひこう)し、食臭(しょくしゅう)を乾噫(かんあい)し、脇下に水氣有り、腹中雷鳴(ふくちゅうらいめい)、下利する者は、生薑瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)之を主る。方二十。
まず意訳します。
傷寒に罹って、発汗解肌しました。
正治したにも関わらず、胃が不和を起こして和降しなくなった。
心下が痞鞕して食べた物の匂いのするゲップが出たが、酸水は出ない。
そして脇下に水振音があり、お腹の腸管に水がゴロゴロと音を立てて走る腹中雷鳴がして下痢するのは、生姜瀉心湯証である。
正治して治癒しないのは、誤治によるものでなく素体として痰飲をすでに持っていた上に、発汗法で少し正気が弱ったためだと推測することが出来ます。
瀉心湯であるので、邪実の目標は心下と考えられます。
111.太陽病(下)149条 半夏瀉心湯と小柴胡湯 で比較しました、半夏瀉心湯と小柴胡湯に生姜瀉心湯を加えてさらに比較してみます。
小柴胡湯 半夏 黄芩 人参 大棗 炙甘草 生姜 柴胡
半夏瀉心湯 半夏 黄芩 人参 大棗 炙甘草 乾姜 黄連
生姜瀉心湯 半夏 黄芩 人参 大棗 炙甘草 乾姜 黄連 生姜
このように比較すると、分かりやすくないでしょうか。
小柴胡湯ー柴胡+乾姜+黄連=生姜瀉心湯
半夏瀉心湯+生姜=生姜瀉心湯
ということになります。
小柴胡湯と半夏瀉心湯については、すでに述べました。
半夏瀉心湯に結滞水毒主冶の乾姜と、心中煩悸を主る黄連を加えていますので、条文の言外の証候を推し測ることが出来ます。
痰飲によって胃気が阻まれ、食滞を起こして熱化した邪熱が食臭のゲップと共に胸に及んで煩悸を感じているはずです。
そして腸管の痰飲はそのまま下って下痢を起こしているのですね。
服用後は、各証候が治まるのと相前後して、小便利を得るはずです。
〔生薑瀉心湯方〕
生薑(四兩切) 甘草(三兩炙) 人參(三兩) 乾薑(一兩) 黄芩(三兩) 半夏(半升洗) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘)
右八味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。附子瀉心湯、本云加附子、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、同體別名耳。生薑瀉心湯、本云理中人參黄芩湯、去桂枝、朮、加黄連、并瀉肝法。
生薑(四兩切る) 甘草(三兩炙る) 人參(三兩) 乾薑(一兩) 黄芩(三兩) 半夏(半升洗う) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘く)
右八味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り。一升を温服し、日に三服す。附子瀉心湯は、本(もと)云う附子を加うと。半夏瀉心湯、甘草瀉心湯は、同體別名なるのみ。生薑瀉心湯は、本云う、理中人參黄芩湯より桂枝を、朮を去り、黄連を加う。并(なら)びに瀉肝法(しゃかんほう)なりと。
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