ブログ「鍼道 一の会」

99.太陽病(下)141条 文蛤散(1)

一四一条

病在陽、應以汗解之。反以冷水之。

若灌之、其熱被劫不得去、彌更益煩、肉上粟起。

意欲飲水、反不者、服文蛤散。

若不差者、與五苓散。

寒實結胸、無熱證者、與三物小陷胸湯(用前第六方)。

白散亦可服(一云與三物小白散)。七。

病陽に在れば、應(まさ)に汗を以て之を解すべし。

反って冷水を以て之を潠(ふ)く。

若し之を灌(そそ)げば、其の熱劫(おびや)かされて去るを得ず、彌(いよ)いよ更に益々(ますます)煩し、肉上粟起(にくじょうぞっき)す。

意(こころ)に水を飲まんと欲すれども、反って渴せざる者は、文蛤散(ぶんごうさん)を服す。

若し差(い)えざる者は、五苓散を與う。

寒實(かんじつ)結胸、熱證無き者は、三物小陷胸湯(さんもつしょうかんきょうとう)を與う(前の第六方を用う)。

白散(はくさん)も亦(ま)た服すべし(一に云う、三物小白散(さんもつしょうはくさん)を與うと)。七。 

 この条文、色々と調べていると、どうやら錯簡があるようなのです。

 まずはそのままざっと意訳してみます。

 病が太陽にある時は、発汗法を用いるべきなのに、冷水を吹きかけたり注いだりして熱を冷まそうとした。

 その熱はおびやかされて去ることが出来ないばかりか、いよいよさらに益々煩するようになり、しかも鳥肌のように皮膚の毛穴が盛り上がるようになってしまった。

 そして水を飲みたいような気持になるが、水を口にすると呑みたい気持ちほど飲むことが出来ない。

 このような場合は、文蛤散を服用させるが、それでも治らない場合は、五苓散を与える。

 裏に寒がある結胸(寒実結胸)で、熱証がないものは三物陥胸湯を与える。白散もまた服するのが良い。

 

 意訳は、ざっとこんな感じなのですが、病理と処方を結び付けるとなると、これがなかなかこれが難しい。

 なぜ単味の文蛤散なのか。

 これは<金匱要略・嘔吐噦下利病>P341 19条 の文蛤湯であると「類聚方広義」では述べられています。

 

 病理を考えてみます。

 太陽表証で、頭項硬痛して、悪寒してしかも発熱しています。

 そこで水を吹きかけたり沐浴でもさせたのでしょうか、胸の辺りがモヤモヤっとして落ち衝かなくなって、鳥肌が立っているのですよね。

 正気が体表に赴いて、邪気に対抗しようとしているのに冷やしてしまった。

 邪気が、寒邪で裏に追いやられたもので、いよいよ勢いつきますよね。

(裏で正邪抗争が激しくなる)

 そこで体表は一時的にしろ、表実となってしまったわけですから鳥肌が立って出口も塞がれてしまいました。

 そうすると陽気が伸びずに内に鬱して熱化するので、煩が現れますし、水を飲みたがるようにもなります。

 ところが、熱の 所在が中焦には無いので、水を飲みたい気持ちになっても、実際に水を口にするとそんなにも飲みたくないのですねぇ。

 そこで文蛤散とありますが、ここが合点のいかないところです。

 これは、「類聚方広義」だけでなく異論を唱えている方が多々あります。

 次回、文蛤湯と文蛤散についてみてみます。

〔文蛤散方〕

文蛤(五兩)

右一味、散為、沸湯以和一方寸匕服。湯用五合。

文蛤(ぶんごう)(五兩)

右一味、散と為し、沸湯を以て一方寸匕(ほうすんひ)和して服す。湯は五合を用う。

〔五苓散方〕

猪苓(十八銖去黑皮) 白朮(十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩去皮)

右五味、為散、更於臼中杵之、白飲和方寸匕、服之、日三服。多飲煖水、汗出愈。

猪苓(十八銖、黑皮を去る) 白朮(十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩、皮を去る)

右五味、散と為し、更に臼中に於て之を杵(つ)き、白飲(はくいん)もて方寸匕を和し、之を服し、日に三服す。多く煖水(だんすい)を飲み、汗出でて愈ゆ。

〔白散方〕

桔梗(三分) 巴豆(一分去皮心熬黑研如脂) 貝母(三分)

右三味為散、内巴豆、更於臼中杵之、以白飲和服。

強人半錢匕、羸者減之。病在膈上必吐、在膈下必利。不利、進熱粥一杯。利過不止、進冷粥一杯。

身熱、皮粟不解、欲引衣自覆。

若以水之洗之、益令熱劫不得出、當汗而不汗則煩。

假令汗出已、腹中痛、與芍藥三兩如上法。

桔梗(三分) 巴豆(はず)(一分、皮心を去り、熬(い)りて黑くし研(す)りて脂の如くす) 貝母(ばいも)(三分)

右三味、散と為し、巴豆を内れ、更に臼中に於て之を杵(つ)き、白飲を以て和し服す。

強人は半錢匕、羸者(るいしゃ)は之を減ず。病膈上に在れば必ず吐し、膈下に在れば必ず利す。利せざれば、熱粥(ねつしゅく)一杯を進む。

利過ぎて止まざれば、冷粥(れいしゅく)一杯を進む。

身熱皮粟(ひぞく)解せず、衣を引き自ら覆(おお)わんと欲す。

若し水を以て之を潠(ふ)き之を洗えば、益々熱劫(おびや)かされて出づることを得ざらしむ、

當に汗すべくして汗せざれば則ち煩す。

假令(たと)えば汗出で已(おわ)り、腹中痛めば、芍藥三兩を與うること上法の如くす。

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