〔抵當湯方〕
水蛭(熬) 蝱蟲(各三十箇去翅足熬) 桃仁(二十箇去皮尖) 大黄(三兩酒洗)
右四味、以水五升、煮取三升、去滓、温服一升、不下更服。
水蛭(すいてつ)(熬る) 蝱蟲(ぼうちゅう)(各三十箇翅足(しそく)を去り、熬る) 桃仁(二十箇皮尖を去る) 大黄(三兩酒洗)
右四味、水五升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、下らざれば、更に服す。
いきなりですが、薬能を記します。
新たに登場しました、水蛭(ヒル)と虻虫(アブ)の二味についての解説です。
水蛭
気味 鹹苦平 有毒
中薬学:破血逐瘀 消癥
薬徴:血証を主冶するなり。
新古方薬嚢:血を潤ほし血を柔らぐ故に蓄血悪血等を除くに用ひらる。これ生きたる蛭既に噛傷より出づる血の凝結を妨げ流れしむるを見て知るべし。故に乾物の亦よく血を結せしめざる効あるものならむ。
虻虫
気味 苦微寒 有毒
中薬学:破血逐瘀 消癥
薬徴続編:瘀血、少腹鞕満を主治し、兼ねて発狂、瘀熱、喜忘、及び婦人の経水不利を治す。
新古方薬嚢:血を逐い滞血を去ることを主る。故によく瘀血を除く。本品と水蛭と効相似て同じからざる所あり。水蛭は血を潤ほし虻虫は血を走らす。
この二味の共通点は、瘀血に働く点です。
その違いは、新古方薬嚢で区別されていますね。
水蛭は血の乾きを潤し、虻虫は滞った血を走らせるのですね。
桃仁は、新古方薬嚢では「血の燥きを潤し滞りを通じ結を解く」とありますから、水蛭の薬能に近い感じですね。
水蛭、すごいですよねぇ~、死んでカラカラに干からびて、乾物になっても血に働くのですねぇ。
さてそして下腹部の鞕満です。
中身は瘀血と瘀熱が結んだ瘀血塊であることが分かります。
そして小便が通じているのですから、この瘀塊を下せば良いと言っているのですね。
この場合、瘀血の有無はどのような外証に求めればよいのでしょう。
腹証奇覧では、腹中に卵のように堅く触れる塊として触知することが出来るとあります。
そしてその塊は、按じると移動する時としない時があるとも記されています。
筆者の経験では、確かに塊が移動する場合とそうでない場合があります。
大きいものですと、妊婦のように下腹が堅く張り出し、その中に石のような硬さの、赤ん坊の頭くらいのものを触れることもありました。
しかしながら、他覚的に目だった腹満が無くとも、自覚的に腹満を訴える場合もあるようです。
今回、吉益東洞著<五診九候之図>を掲載しますね。
フム~、あまりにも簡単にすぎる・・・と感じるのですが、これで十分だったのかもしれません。
この図の注釈に「瘀血は、小腹の傍らに塊物有るなり。此の毒有るものは、小腹鞕満して小便快利し、或は腹満せずして其の人、自ずから満つと言う者なり。方は、抵当湯及び丸。」とあります。
さて気色は、瘀血色が現れている場合もありますが、腹証奇覧によりますと「唇手足、共に青白色に透き通る如くにして沢なし」とありますので、一概には言えなさそうです。
小便は快利しているものの、大便は黒色であるとも記されています。
現代医学的にも、月経が停止して精神異常が現れる場合や、骨盤内臓器の腫瘍などに用いることが出来ると思います。
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