【六二】
發汗後、身疼痛、脉沈遲者、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯主之。方二十五。
發汗後、身疼痛し、脉沈遲の者、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯(けいしかしょくやくしょうきょうかくいちりょうにんじんさんりょうしんかとう)之を主る。方二十五。
さてこの条文、どこの条文を受けてなのか、今ひとつはっきりしません。
とにかく、太陽病で発汗の後、身体に疼きが現れて遅脈になったのですね。
身体の疼きは、麻黄湯証でも大青龍湯でも現れていました。
病理は、肌表の水のうっ滞が気滞を生じて現れた症状であることは、すでに述べた通りです。
ところが今回は、発汗後に現れた症状に加えて、酸微寒の芍薬、苦甘温の人参という水を集めてくる薬剤が配されています。
さらに脉沈遅です。
しかも表証はまだ少しと言えども依然として存在しているかもしれませんが、裏に重きを置いた方剤であることは分かると思います。
中焦に集めた水を、生姜がさばいて桂枝と共に表に送ろうとする意図を感じます。
これらから考えられるのは、気血両虚でこれから裏証少陰病に陥るか、表の微邪を発することが出来ない状態が浮かび上がってきます。
人参が配されていますので、心下も痞鞕していることでしょう。
そうするとこの身体の疼きは、やはり肌表に水がありながらも、押し出す気血と水が不足した状態なので、麻黄湯類のような厳しい身体の疼きではないことが分かると思います。
少陰病にも、身体の疼きの症候がありますが、気を付けて聞き出さないと、だるさと変わらない程度の軽度なものです。
さて、この新加湯、鍼を用いるならどうでしょう。
病理さえ分かれば、後は身体が現している状態に応じた取穴が可能だと思います。
〔桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯方〕
桂枝(三兩去皮) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘) 生薑(四兩)
右六味、以水一斗二升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今加芍藥生薑人參。
桂枝(三兩皮を去る) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙る) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘く) 生薑(四兩)
右六味、水一斗二升を以って、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云(い)う桂枝湯に今芍藥、生薑、人參を加える。
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