ブログ「鍼道 一の会」

48.太陽病(中)40条 小青龍湯(3)「或~」の兼症病理

四〇

傷寒、表不解、心下有水氣、乾嘔、發熱而、或、或利、或噎、或小便不利、少腹滿、或喘者、小青龍湯主之。方十。

傷寒、表解(げ)せず、心下に水氣有り、乾嘔(かんおう)し、發熱して欬(がい)し、或いは渴は(かっ)し、或いは利(り)し、或いは噎(いっ)し、或いは小便不利し、少腹滿し、或いは喘(ぜん)する者は、小青龍湯之を主る。方十。

 

 それでは今回、兼証を起こしている病理を個別に見ていきます。 

 この乾嘔は、12条桂枝湯証の乾嘔とは病理が微妙に異なります。

 桂枝湯の場合は、背部の上に正気が赴く上衝によって胃気和降が失調した乾嘔です。

   小青龍湯の場合は、心下の痰飲によって胃気の和降が阻まれて起きた乾嘔です。

 おそらく、素体として元々から痰飲が存在していたのでしょう。

 麻黄湯類で肌表から水と熱を発しても、裏水が滞って動かないので、表証が解けきれない状態です。

 その点では、裏水は寒であっても、実証と捉えることが出来ます。

  そして「或いは」でくくられている兼症についてその病理を順次考察します。

①口渇

  口乾ではなく口渇です。

  心下に水気が存在しているにも関わらず、水を飲みたがる状態です。

 そもそも、正気はそんなに弱っていないのですから、裏水(寒水)が陽気を阻んで中焦で熱化したのかもしれません。

 水が陽気を閉じ込めているようなイメージです。

 だからこそ、水が一部であれ痰に化したとも考えられます。

 しかし口渇があっても、そんなにたくさん飲水を欲するような状態ではないと思います。

②下痢

 この場合の下痢は、葛根湯の自下利と病理が似ています。

 小青龍湯の場合、内外が水で溢れていると考えると良いと思います。

 37.太陽病(中)31~32条 葛根湯証 自下利

③ 噎(いつ=むせぶ)

 噎(いつ)は噫(あい)の間違いだとする説がありますが、噫気(あいき=げっぷ)ととらえると、どちらも胃気が和降しない状態だと理解できます。

④小便不利して少腹満

 方剤内に白朮・附子が配されていないので、気虚・陽気不足ではありません。

 方剤構成からは、肺失粛降と中焦に凝り固まった水~痰が水道気機を阻んで小便不利となっていると考えられます。

 また中焦から下焦に下った水が気化されず、滞って小便不利と少腹満が現れている状態です。

 総じて、上焦と中焦の気機不利が下焦にまで及んだ状態です。

 いわば、容器上部の穴が塞がり、容器内の寒天が降りない状態をイメージして頂けたらと思います。

 いわゆる、プッチンプリンのツメが折れない状態ですね。

 次回は、方剤構成を見みてみます。

 

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