前回の投稿で、越婢湯は、内熱傾向の人が風湿の外邪に侵され、上半身を中心に浮腫が現れた病態に用いられると考えられることを述べて参りました。
そこで元に戻って、27条の桂枝二越婢一湯を再考することにします。
25条の桂枝二麻黄一湯、26条の白虎加人参湯は、大いに汗が出た後の証でした。
27条も、大いに発汗が見られた後の証として考えます。
もう一度条文を掲げます。
【二七条】
太陽病、發熱惡寒、熱多寒少、脉微弱者、此無陽也。不可發汗、宜桂枝二越婢一湯。方十四。
太陽病、發熱惡寒し、熱多く寒少なく、脉微弱なる者は、此れ陽無きなり。發汗すべからず、桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)に宜し。方十四。
脉微弱なので、これ以上発汗させてはいけないとされています。
ところがこの場合、風寒の邪が解け切っていない上に、湿邪にも侵されていることが推測されます。
ひょっとすれば、ごく軽い浮腫も見られるかもしれませんね。
もしまた実際、脉が微弱で陽気が無いとするならば、湿邪が陽気を阻んでいるとも理解することも出来ます。
条文には、脈が微弱、陽気が虚しているのでこれ以上発汗させてはいけないとされていますが、方剤構成をみると桂枝・麻黄が配されていますので、やはり少し発汗させると考えられます。
さらに石膏が配されているので、ある程度の内熱も存在しているはずですので、脈微弱とするのには、少々疑問が残るところでもあります。
筆者は、内湿が盛んで下肢に冷えが存在し、脉弱であっても、除湿瀉法を加えることで陽気が行りだし、脈も反って有力となって下肢の冷えが回復した例があります。
このあたりの事は、実際の臨床で確認する必要があると思います。
諸氏のご意見を賜りたいところであります。
〔桂枝二越婢一湯〕
桂枝(去皮)芍藥麻黄甘草(各十八銖炙)大棗(四枚擘)生薑(一兩二銖切)石膏(二十四銖碎綿裹)
右七味、以水五升、煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。
本云、當裁為越婢湯、桂枝湯、合之飲一升。今合為一方、桂枝湯二分、越婢湯一分。
(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今以算法約之、桂枝湯取四分之一、即得桂枝芍藥生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚。越婢湯取八分之一、即得麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分之七、棄之、二湯所取相合、即共得桂枝芍藥甘草麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚、合方。舊云桂枝三、今取四分之一、即當云桂枝二也。越婢湯方見仲景雜方中、外臺秘要一云起脾湯。)
桂枝(皮を去る)芍藥麻黄甘草(各十八銖、炙る)大棗(四枚、擘く)生薑(一兩二銖、切る)石膏(二十四銖、碎き綿もて裹(つつ)む)
右七味、水五升を以て、麻黄を煮ること一、二沸、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。
本(もと)云う、當(まさ)に裁(た)ちて越婢湯(えっぴとう)、桂枝湯と為るべくして、之を合して一升を飲む。今、合して一方と為す、桂枝湯二分、越婢湯一分とす。
(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今算法を以て之を約するに、桂枝湯四分の一を取り、即ち桂枝、芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚を得。越婢湯八分の一を取り、即ち麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分の七を得、之を棄て、二湯取る所は相合して、即ち共に桂枝、芍藥、甘草、麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚を得、合方とす。舊(ふる)くは桂枝三と云い、今は四分の一を取る、即ち當に桂枝二と云うべきなり。越婢湯方は仲景雜方中に見え、外臺秘要は一つに起脾湯と云う。)
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