朝・夕ずいぶん涼しくなってきました。
ツクツクボウシが鳴き、虫の声が聞こえ始めると、なんとなく寂しくなります。
今年は曇りや雨の日が多く、夏らしい夏が短かったような気がします。
そして筆者自身は、湿気の影響を大いに受けた夏でした。皆さんはいかがでしたでしょうか?
8月23日(日)に行われました『一の会・東洋臨床医学講座』の第5回目について、スタッフ大上が概要をレポートいたします。
1限目:易学
永松副代表
永松周二 先生 |
今回より「五運六気」に入っていきます。
五運六気とは「運気論」とも呼ばれ、古代中国において天地間における天候や気象の変化が人体の機能を含めた森羅万象にどのような影響を及ぼすかについて説かれた学説であり、<黄帝内経・素問>の中の<運気七編>と呼ばれる部分にその詳細が記されています。
今回の講義では、
・十天干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸) ― 五運=五行(土金水木火)
・十二地支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥) ― 六気(風寒暑湿燥火)
上記を用いて2015年・2016年・2017年がどのような年であるかを読んでみました。
東洋医学では、人が健やかに生きていく根幹の一つは「自然との調和」にあると考えます。
また、現代のように科学文明が発達しておらず、流行り病や飢饉で多くの人々の命が失われた時代、病の傾向や作物の出来を予測するなど、易の役割は大きかったと思われます。
さらに、先生曰く、現代西洋医学における事象はすべて東洋医学で説明が可能であるが、その逆は不可能であろうと。
それほどに東洋医学が内包するものは大きいがゆえに、「易」をしっかりと押えておく必要があると仰っています。
2限目:生薬から学ぶ有名病証
稲垣学術部長
稲垣順也 先生 |
前回の講義では、肝気鬱結に端を発する一連の病態について解説がありましたが、今回は「心火上炎証・心肝火旺証」について、「三黄瀉心湯」(傷寒論においては「瀉心湯」)を取り上げ、その病理・治法について解説していただきました。
君主の官であり、「神」を蔵する「心」に火が付いてしまいやすい人にみられる傾向や、そのような人に対して注意すべきことについても、大変わかりやすい言葉で説明してくださいました。
また、「血瘀証」について。
「血瘀(瘀血)」とはいかなる病態か、その病理機序、また臨床において特徴的な所見、等を中医学的解釈と傷寒雑病論における解釈の違いを交えながら解説していただきました。
印象的だったのは、中医学においては、血行に何らかの障害が考えられる徴候があれば何でもかんでも「瘀血だ」と言う。しかも、瘀血があるとしたところで治療法がない。
一方、傷寒雑病論においては、瘀血を治療できる方剤は限られており、それに対応する「証」が存在する場合のみ、瘀血があるとするのだそうです。
加えて治療法としての方剤(「抵当湯」・「抵当丸」・「桃核承気湯」)およびそれを構成する生薬についての解説、さらに鍼灸であればどのような治療を行うのが相応かということについてもお話しくださいました。
生薬の見本 |
意外と美味しい? |
3限目:時事講義 ~ 4限目:臨床実技
金澤代表
金澤秀光 先生 |
今日のテーマ 「背候診」 について、その意義と目的および方法。
またそれに関連して、過去の講義でも取り上げられました「任・督脈の流注」、「腎・神主学説」の復習とその臨床応用について。
- なぜ、鍼灸治療では背候診が重要視されるのか?(翻って湯液治療においてはなぜ腹診が重視される?)
- 督脈と足太陽が流注していることの意味は?
- 背部兪穴と手足の原穴の関係
- 大腸兪・小腸兪が下焦にあることの臨床的意義とは...等々
上記について、陰陽論,一元三岐理論,開合枢理論に加え、ご自身の臨床経験を織り交ぜ解説されました。
金澤代表の講義について、いつもながら思うことですが、あらゆる理論を縦横無尽に駆使し、且つ豊富な臨床経験に裏打ちされた語り口は、音楽に例えれば交響曲のような迫力を持って迫ってくるような感じがします。
臨床のプロになるためには、まっすぐで平坦な道は存在しない。
勉学と実践を休むことなく積み重ね、成功も失敗も数多く経験した先に到達できる境地があることを教えられます。
それを証明できるのは自分しか居ない。
ぜひとも証明してください、僕の考えに異議があればぜひ指摘してください、と締めくくられました。
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