Google+ への以前の投稿に引き続き、表証に関して自分が印象深かった体験をご紹介します。
当時はまだ小学生でしたから、それが桂枝の証であったとか上衝であったとかは、最近になって分かったことですが。
子供の頃の私は、風邪を引いてもなかなか発熱せず、鼻水を非常に多く出し、体のしんどさを長く引きずってしまうタイプでした。
今回ご紹介する時の風邪は、上の状態に加え、自分にしては珍しく、引き始めから食欲も低下していました。
季節は冬でした。
風邪を引いて、丸一日寝込んだ後、食欲はまだ回復せず、ただ温かい水気のものが欲しかったので、味噌汁を母に作ってもらいました。
ストーブでよく温められたダイニングキッチンで、味噌汁を一口飲み始めると、思いのほか食欲は促され、それでも固形物を口に入れるのはつらかったので、味噌汁を何杯も、母を驚かせるほどに飲んでしまいました。
食欲が治まった後、体のしんどさがまた気になってきたので、横になって休むため、寝室へ戻ることにしました。
空気が冷たい冬の寝室へと戻った途端。
吐き気や気分の悪さを感じる暇も無く、本人が驚くぐらい反射的に、先ほど飲んだ味噌汁を、ほぼそのまま吐いてしまいました。味噌汁が、胃から勝手に飛び出したかのようでした。
温かい味噌汁は、脾陽(中焦の陽気)を助け、正気を補い、体の中から発汗解表を促してくれていたと考えられます。
その途中で、温かい部屋から冷たい部屋へと急に移動し、体表の汗孔を外寒によって凝滞させてしまったために、行き場を限定された体の陽気は、物質(味噌汁)を引き連れつつ、残された通路である口より抜けていくしか無くなってしまったのでしょう。
以前の講座でお話した、映画館などの冷房がよく利いた施設から夏の炎天下へ出てきた時に発生する頭痛は、夏の太陽によって中・下焦の陽気が増幅されつつも、上焦の寒凝はまだ残っている(汗の出口は閉ざされている)ために、寒(体を引き締めようとする力)と熱(体から出ていこうとする力)とが抗争して起こっていた訳です。
次回の講座で解説していく予定の麻黄湯証と麻杏甘石湯証の違いは、この寒と熱との戦いのうち、どちらに問題の本質があるかという違いでもあります。
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