夏・・・躍動感あふれる季節 |
2.夏‐長 【夏・・・成長の気】
夏の季節、すなわち立夏かから立秋までの3カ月を、古来これを蕃秀(ばんしゅう)と言います。
天と地の気が最も盛んに交流し、花は咲き栄え、万物が盛んに成長する時期という意味です。
夏は生きとし生けるものすべてが活発に行動し、日差しも厳しく、雨も激しく降り注ぎ、汗ばむ太陽の季節が夏のイメージです。
この時期は、心身ともに伸びやかに開放的にし、精神的にも肉体的にも『発散』を心がける時期です。 そして心身ともにすべて外向きにして、内に鬱しないことが大切です。
さらにこの時期は日照時間が長いので、長時間行動して、疲れきってしまわないことも大切です。
古典には、イメージしやすいように以下のように記されています。
<この時期は、芽を出した植物があっという間に伸びる様子や鳥や虫たちも盛んに飛び交う様子に象徴される。
この時期の太陽の動きに応じて、少し遅く寝て早く起き、日の長さや暑さを嫌うことのないようにするのが良い。、
夏は炎暑で気が上に激しく昇るので、気持ち的には怒ってさらに気が昇らないようにするべきである。
精神的には、恋人が外で待っているかのように、心を弾ませて外に出かけるようにし、内にこもることのないように心掛けるのがよい。>
この時期は、適度に発汗することがポイントになります。一日の内では、昼に相当しますので、悩んだり落ち込んだりすることのないよう、心身ともに躍動感にあふれるように過ごしたいものです。
【身体に現れる変化】
身体の変化としては、春の間の過ごし方が、夏になって表面化します。朝の状態は当然、昼の活動状態に影響します。
夏の季節は、春の気がさらに増長されて、内から外へ、下から上へと気が激しく動きますので、気を散じて気虚を起こしやすくなります。
汗は、体液+陽気という簡単な数式で理解されます。適度に発汗すると、身体が涼しくなり、逆に運動を嫌って発汗不足となると、体内に熱がこもって返って冷たいものが欲しくなり、暑気が厳しく感じるようになります。
図‐1‐2を見て頂けると分かると思いますが、気が外向きに発散するので、肉体的には内部に気が不足気味になり、下痢などの症状を起こしやすくなります。
図 1-2 |
脈診においては、太鼓を打つかのような激しく盛んな「洪=鈎」脉となり、特に発汗時は脉が浮いてきます。
東洋医学では、陽気が体内に鬱しないようにすると同時に、人体内部の陽気が傷つかないように養生指導をします。
夏の気は発散なので陽気不足となって下痢を起こしやすく、冷たいものだけでなく水分を摂り過ぎると消化器機能低下に陥り、いわゆる『夏バテ』や『食あたり=食中毒』を起こしやすくなります。
精神的なイライラや怒りは、臓を直接傷害するので、どの季節においても禁忌ですが、夏は特に気の動きが激しいので、感情の中で最も激しく気が動く怒気には注意が必要です。
また、クーラーなどの冷えた場所で、あまり汗をかかないでいると、陽気の代謝が悪くなり、本来排泄されるべき熱までが体内にため込まれるので、秋に引き締まる収斂の気によって行き場のない邪気が出口を求めて様々な症状となって現れるようになります。
一日中冷房下で仕事をされている方には、散歩や軽いジョギング、体操など、身体を動かして適度に発汗を促し、身体を涼しくさせるような養生指導を行います。従って夏は、適度に涼をとりながら、体力に合わせて発散することが肝要です。
また反対に、夏に発汗過多であると、秋に陽気不足となって風邪を引きやすく、逆に発汗不足であれば、内熱が盛んとなって咳や発熱しやすい、アトピー症状の悪化といった症状が現れやすくなります。
また精神的には、屋外でのびのびと発散させ、鬱することのないようにするのが、この時期にふさわしい養生法です。
コメントを残す