頭部から部位毎に、下がって経穴を説明している医心方。
多くは黃帝三部鍼灸甲乙経から抜粋しています。
当時も鍼灸の初級から上級への理解、臨床への門が狭く、徒弟制度の中で伝えても、目先の結果だけに走る人が多かったことがうかがえます。
とはいえ初心者には目先の結果が現れ励みになるように、そして上級者には臨床の心構えと、理解が深まるように、さらには臨床の上級者が改めて読むと、実際の気の偏在がイメージしやすいようにとの心配りがあったのではないかと、想像することができる内容です。
多くは黃帝三部鍼灸甲乙経から抜粋しています。
当時も鍼灸の初級から上級への理解、臨床への門が狭く、徒弟制度の中で伝えても、目先の結果だけに走る人が多かったことがうかがえます。
とはいえ初心者には目先の結果が現れ励みになるように、そして上級者には臨床の心構えと、理解が深まるように、さらには臨床の上級者が改めて読むと、実際の気の偏在がイメージしやすいようにとの心配りがあったのではないかと、想像することができる内容です。
なぜなら、難解な古典を集約して簡便にしていること、一穴での標本同治を志していることなどが伺えるからです。
それは、頚部の経穴の解説にも良くあらわれており、分かる人はじっくりと考えて見ていただきたいところです。
それは、頚部の経穴の解説にも良くあらわれており、分かる人はじっくりと考えて見ていただきたいところです。
局部・局所と四肢末端、しいては五臓六腑の有様が、寸口脈診からだけではなく、様々な観点から伺い知ろうとしている態度が見えて来るように感じないでしょうか。
経穴の使用に関しては、主訴や随伴症状として捉えると初級。
弁証を用いた後、できるだけ少ない経穴を用いて気を導き、心身の気の偏在を調えることができるのならば、中級と言ったところでしょうか。
弁証を用いた後、できるだけ少ない経穴を用いて気を導き、心身の気の偏在を調えることができるのならば、中級と言ったところでしょうか。
例えば、天牖穴は、
「肩背が痛む、寒熱どちらかに気が偏り、急激に耳が聞こえなくなる、目がはっきりと見えなくなる、頭や顎が痛む、涙が出る、嗅覚が失われる、喉が痺れる。」
等と数々の症状を書いています。
これが、症状ひとつだけを記載していたのであれば、一対一の対応になるので単にマニュアル的になる可能性があります。
初心者はその安易な罠に陥り、効く時もあれば効かない時もある…なぜだろうと迷うことになります。
初心者はその安易な罠に陥り、効く時もあれば効かない時もある…なぜだろうと迷うことになります。
そこで思考や試行錯誤をやめてしまえば永遠の初級者、素人と変わらなくなります。
数々の症状を記載することで、肩背に気が流れない場合、実であれば熱感を感じ、虚であれば冷えを感じるはずであると深読みすることが出来ます。
虚実どちらであっても、上焦に気が流れないことが原因となって、耳或いは、目、頭、顎等に症状が現れます。
従って患者を更に多方面から観察し、自分の持てる知識、知恵と照らし合わせ、斟酌して証を決定することを、暗に教授していると考えられます。
この天牖穴の虚実が何を示しているのかを深く考察し、そのような目で身体を観察することができるようになると、中級と称するにふさわしいのではないかと感じます。
数々の症状を記載することで、肩背に気が流れない場合、実であれば熱感を感じ、虚であれば冷えを感じるはずであると深読みすることが出来ます。
虚実どちらであっても、上焦に気が流れないことが原因となって、耳或いは、目、頭、顎等に症状が現れます。
従って患者を更に多方面から観察し、自分の持てる知識、知恵と照らし合わせ、斟酌して証を決定することを、暗に教授していると考えられます。
この天牖穴の虚実が何を示しているのかを深く考察し、そのような目で身体を観察することができるようになると、中級と称するにふさわしいのではないかと感じます。
その他も同様ですが、部位毎に記載しているので、空間的に上下連続した気の流れや、前後左右の気の流れがダイナミックに観察できると感じています。
原文及び書き下し文
● 天牖二穴 在頚筋缺盆上、天容後、天柱前、完骨下、髪際上、刺入一寸。留七呼。灸三壮。
手小腸、三焦。
主肩背痛、寒熱、暴聾、目不明、頭頷痛、涙出、鼻不知香臭、喉痺。
天牖二穴 頚筋の缺盆の上、天容の後、天柱の前、完骨の下、髪際の上にあり。刺入るること一寸留むること七呼。灸は三壮。手の小腸、三焦。
肩背痛く、寒熱にして、暴に聾(みみしい)にして、目明らかならず、頭頷痛く、涙出で、洞鼻香臭を知らず、喉痺るる、を主どる。
● 天柱二穴 在使項後髪際、大筋外廉陷者中。刺入二分。留六呼、灸三壮。
足太陽膀胱。
主熱病、汗不出、目[目+芒]々赤痛、眩、頭痛重、目如脱、項如抜目瞑、咽腫、難言。
天柱二穴 項を挟む後ろの髪際、大筋の外廉の陷める者の中にあり。
刺入るること二分。留むること六呼。灸は三壮。足の太陽、膀胱。
熱病にて、汗出でず、目茫々として赤く痛み眩し、頭痛く重く、目脱くるが如く、項は抜くるが如く、目眩み咽腫れ、言ひ難き、
を主どる。
● 風池二穴 在顳顬後、髪際陷者中。灸三壮。
足少陽胆、陽維脈。
主寒熱、癲仆狂、熱病汗不出、眩、頭痛、頚項痛、耳目不用、喉咽僂引。
足の小陽、胆。腸維脈。(陽維脈)
寒熱にて倒れ伏し狂ひ、熱病にして、汗出でず、眩し、頭痛く、
頚頭痛く、耳目用いず、咽喉屈まり引く、を主どる。
● 天窓二穴 一名、窓聾。在曲頬下、扶突後、動脉應手陷者中。刺入六分、灸三壮。
手太陽腸。
主耳聾、頬痛腫、喉痛、瘖不能言、肩痛引項、
汗出及漏耳鳴。
天窓二穴 一名、窓聾。曲頬の下、扶突の後、動脈の手に応じて陷める者の中にあり。刺入るること六分。灸は三壮。手の太陽、腸。耳聾にして、頬痛く腫れ、喉痛く、瘖(おうし)にして言ふこと能わず、肩の痛み項に引き、汗出で、及び漏れ、耳鳴る、を主どる。
● 天容二穴 在耳下曲頬後。刺入一寸、灸三壮。
手少陽三焦、又足少陽胆。
主寒熱、喉痺、欬逆上、唾沫、疝積、胸中満、耳聾、頚項腫、咽腫、肩痛。
天容二穴 耳下の曲頬の後ろにあり。刺入るること一寸。灸は三壮。
手の少陽、三焦。又た、足の小腸(少陽)胆。
寒熱にして、喉痺れ、欬逆上して沫を唾き、疝積にて、胸中満ち、耳聾にして、頚項腫れ、咽腫れ肩痛き、を主どる。
● 人迎二穴 一名、五會。在頚大脉動、應手。挟結喉旁。
禁不可灸、刺四分。足陽明胃。
主霍乱、腸逆、頭痛、胸満、呼吸喘喝[乙介切嘶聲也]。
人迎二穴 一名、天五會。頚の大脈の動、手に応ずる。結喉を挟む旁らにあり。禁じて灸すべからず。鍼は四分。足の陽明、胃。
霍乱、腸逆、頭痛く、胸満ち、呼吸喘ぎ喝(むせ)ぶ、を主どる。
● 水突二穴 一名、水門。在頚大筋前、直人迎下、気舎上。
刺入四分。灸三壮。足陽明胃。
主欬逆上気、咽喉癕腫、呼吸断、気喘息不通。
水突二穴 一名、水門。頚の大筋の前、人迎に直る(あたる)下、気舎の上にあり。刺入るること四分。灸は三壮。足の陽明、胃。
欬逆上気し、咽喉癕(よう)腫あり。呼吸断たれ、気喘ぎ、息通ぜざる、を主どる。
● 気舎二穴 在頚、直人迎、天窓後陷者中。刺入四分。
灸三壮。足陽明胃。
主欬逆上気、肩腫、喉痺、瘤癭。
気舎二穴 頚の、人迎に直る、天窓を挟む陷める者の中にあり。
刺入るること四分。灸は三壮。足の陽明、胃。
欬逆上気、肩腫れ、喉痺れ、瘤癭、を主どる。
● 天鼎二穴 在頚、缺盆直扶突、気舎後一寸半。刺入四分。
灸三壮。足陽明大腸。
主暴瘖、気哽、喉痺、咽腫、不得息、
飲食不下。
刺入るること 四分。灸は三壮。手の陽明、大腸。
暴かに瘖にして、気哽び(むせび)、喉痺れ、咽腫れ、息をするを得ず、飲食下らざる、を主どる。
● 扶突二穴 一名水穴。在曲頬下一寸、人迎後。仰而取之。
刺入四分。灸三壮。手陽明大腸。
主欬、唾、上記、咽喝喝、喘息、喉鳴、暴悟、瘖、気哽與舌本出血[乙介反嘶聲也]。
扶突二穴 一名、水穴。曲頬の下一寸、人迎の後ろにあり。仰ぎて之を取る。
刺入すること四分、灸は三壮。手の陽明、大腸。
欬(しわぶき)し、唾し、上気し、咽中喝喝、喘ぎ息し、喉鳴り、暴かに悟ひ(さからひ)、瘖に、気哽ぶと、舌本の出血するを主ど
る。
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