医心方巻一の最後の篇に当たる、薬畏悪相反法と諸薬和名は、どちらもかなり専門的な薬材のお話しです。
薬畏悪相反法は、漢方の七情の考え方(感情の喜、怒、哀、懼、愛、楽、欲と単行、相使、相悪、相反、相畏、相須、相殺を類似して考え配合に生かす方法)を基本に、薬材と薬材の相性を記し、同時に使ってはいけない薬材、薬材の効果を増す薬材、薬材の効果を減らす薬材の組み合わせなどを記載しています。
薬畏相反法も諸薬和名も玉石(鉱物類)、草、木、獣禽類、虫魚類、果物類、米穀類を上中下の品に分けて記載しているのは、本草経から抜粋しているからです。
同じ薬材でも、どの産地の物が最も良品であるか、薬材自体の採れる産地による違いも記されています。
どれだけ診立てをしっかりとし、人体の証に合致し、厳密に薬剤を配合しても、、薬剤自体の品質が悪ければ、粗悪で効果の少ない方剤にしかなりません。
何を学んだか?
何をなすべきか?
これらを考えず商業主義に乗ってしまえば、人の技術も同様に質そのものが落ちてしまいます。
医心方巻一には、医術に対する基本姿勢を問われるような記載が多々見られました。
これは『医心方』の内容が、他の古典典籍から抜粋している事から考え併せると、当時でも当然ながら、その志が問われ、医道を誤る人が後を絶たなかった為であろうと考えられる。
古今東西、医道に携わる人間に対する、戒めの意図を汲み取れば、身が引き締まる思いで巻一を手に取り、又折に触れて目を通し、その度に自らを律していきたいと強く感じた次第です。
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