医心方巻一の第六篇は調合法についての記載になります。
ここでも冒頭に、薬を搗く際には、
先ず香を焚き、水を撒いて清潔にし、雑談をしてはいけない。
幼い子供に薬を搗かせ、努めてこなれさせる。
と、エネルギーの発生する場を浄め、心も浄め、エネルギーに溢れた若い人に行って貰うという科学的ではないけれど、数値には表れなくとも、感じるものは全て完璧にしようという気持ちが現れています。
現代の様に大量生産するのは、より多くの人に享受して貰う際には必要ですが、その分このような精緻なエネルギーを取り入れることを断念していることも念頭に置く必要があります。
特に腎気丸、薯蕷丸及び様々な大五石丸、大麝香丸、金牙散、大酒煎膏などを調合する際には精気が漏れないようにする為、健康な人以外に見られないようにする事が書かれています。これは、備急千金要方に記載されている
凡合腎気薯蓣及諸大補五石大麝香丸、金牙散、大酒煎膏等,合时煎时,并勿令婦人、小儿、産母、丧孝、痼疾,六根不具足人及雞犬六畜等見之,大忌,切宜慎之。其続命湯、麻黄等諸小湯不在禁忌之限。比来田野下里家因市得薬,随便市上雇人搗合,非止諸不如法。至于石斛、菟絲子等難搗之薬,費人功力,賃作搗者隐主悉盗弃之。又為尘埃穢气入薬中,罗筛粗悪随風飄揚,衆口賞之,衆鼻嗅之,薬之精气,一切都尽,与朽木不殊。又复服餌,不能尽如法,服尽之后,反加虚損,遂榜医者,处方不效,夫如此者,非医之咎,自縁発意甚誤,宜熟思之。
この部分ですが、大忌、切宜慎之「大いに忌み、切に宜しく之を慎むべし」と書かれているように、材料から発せられるエネルギーを極力集約して薬に昇華させるべき事が大切だという考えが見受けられます。
どんな技術でも、単なるマニュアルだけではなく、細心の注意と魂を込めた作業が「竜の目に睛入れる」事になるのを示しているのでしょう。
具体的な調合法よりも、調合する際のエネルギーの損失を控え、貯蔵する際に漏らさないようにし、最大限に薬効を出す為の季節、期日などが詳細に書かれています。
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