【一六六条】
病如桂枝證、頭不痛、項不強、寸脉微浮、胸中痞鞕、氣上衝咽喉不得息者、此為胸有寒也。當吐之、宜瓜蔕散。方二十八。
病、桂枝の證の如くなるも、頭痛まず、項(うなじ)強らず、寸脉微(すこ)しく浮、胸中痞鞕し、氣咽喉に上衝し、息することを得ざる者は、此れ胸に寒有りと為すなり。當に之を吐すべし。瓜蔕散(かていさん)に宜し。方二十八。
桂枝湯証によく似た病に罹っているが、頭項項痛などは無い。寸口の脈がわずかに浮いているようで、胸中が痞鞕している。
そして気が上衝して咽喉が塞がり、息がしにくいのは、胸に寒邪が迫って来たためである。
まさにこれは瓜蒂散証であるから、吐かせなさい。
このような意味でしょうね。
さて、瓜蒂散証になる病の流れはどうなのでしょう。
方剤を見ると、瓜蒂と赤小豆が用いられています。
瓜蒂は涌吐剤で主薬です。
赤小豆は、<新古方薬嚢>によると、「こわばりを緩めて水穀の行りを利する」とあります。
また著者、荒木性次は風邪やその他、熱のある病を患っている中に急性症として現れると述べています。
その際、急に手足が冷たくなり、食欲はあっても食べることが出来ないなどの兼症が現れるとも述べています。
これらの事から、素体として内熱と痰飲があり、たまたま寒気に触れて熱結と痰飲が上衝した状態と理解することが出来ます。
胸中痞鞕とありますが、恐らく心下も非常に厳しい痞鞕があるだろうと想像することが出来ます。
吐した後、恐らく今度は大小便が快利するだろうと想像できます。
瓜蒂散は、かなり厳しい瀉法となるので、虚実をしっかり弁別する必要があると、最後に記されています。
瓜蒂は、マクワウリのヘタです。
筆者は、瓜蒂を手に入れようと八方手を尽くしたのですが、入手不可能でした。
一度、自分で試してみたい方剤のひとつです。
167条は、原文と読み下し文のみの記載です。
〔瓜蔕散方〕
瓜蔕(一分熬黄) 赤小豆(一分)
右二味、各別擣篩、為散已、合治之。取一錢匕、以香豉一合、用熱湯七合煮作稀糜、去滓、取汁和散、温頓服之。不吐者、少少加。得快吐乃止。諸亡血虛家、不可與瓜蔕散。
瓜蔕(かてい)(一分、熬(い)りて黄ならしむ) 赤小豆(せきしょうず)(一分)
右二味、各々別に擣(つ)きて篩(ふる)い、散と為し已(おわ)りて、合して之を治(おさ)む。一錢匕(ひ)を取り、香豉(こうし)一合を以て、熱湯七合を用いて煮て稀糜(きび)を作り、滓を去り、汁を取り散に和し、温めて之を頓服す。
吐せざる者は、少少加う。快吐(かいと)を得れば、乃ち止む。諸亡血虛家(しょぼうけっきょか)は、瓜蔕散(かていさん)を與うべからず。
【一六七条】
病脇下素有痞、連在臍傍、痛引少腹、入陰筋者、此名藏結、死。二十九。
病、脇下に素(もと)痞有り、連りて臍傍(せいぼう)に在り、痛み少腹に引き、陰筋に入る者は、此れを藏結と名づく、死す。二十九。
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