養生の基本は、これまで何度も書いてきましたように、自然界の気の変化に、私たち人間の心身と生活態度を寄り添うように応じていくことです。
ある季節になると精神状態や身体の不調が現れるのは、ひと季節前の生活に原因がありますよと述べているのが、この篇の素晴らしいところです。
中医学で述べられている人体の「気機」は、昇降出入です。この昇降出入は、自然界でも同じように起きています。
この書き方は、実は逆でして、自然界に昇降出入の気機があるから、それに応じて人体にも同様の気機が生じるのですね。
このあたりのことは、養生の基本 ① 素問・四気調神大論2で、図を用いて解説しておりますので、ご覧くださればと思います。
今や国民病となり、マスコミ等の告知の影響もあり、春の花粉症は花粉が原因と広く信じられるようになってしまいました。
春の花粉症は、四気調神大論からすると、冬・蔵の時期の過ごし方に原因があることになります。
冬から春にかけては、内向き・下向きの気の方向が、逆転して外向き・上向きに変化します。すると冬の蔵気が盛んな時期に、体内にため込まれた痰飲が、外向き・上向きとなって鼻腔から噴き出してくるのが鼻水です。
そして目や顔の痒みは、冬にため込まれた余剰の陽気=熱が顔面部に昇ってきたためです。熱があると、異物に過剰に反応するのが東洋医学的見解ですね。
春になると、決まって鼻血が出る方や皮膚症状等、春に発症するあらゆる病も同じ病理です。
現代人は、季節に関係なく、精神的に何かに追われておられる方が大半です。身体的にも上気しやすいので、春になるとさらに上逆してしまうのも当然と言えるかもしれません。
加えて冷蔵庫の普及により、ビールやジュース、アイス、ヨーグルトなど、身体に痰飲を生じさせる食生活が津液過剰となり全身の代謝を阻みます。
今回、四気調神大論で述べられている内容を背景に、春に症状が現れる病理をざっくりと書いてみました。
つづく
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