ブログ「鍼道 一の会」

195.厥陰病 352条 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 内有久寒

【三五二条】

若其人内有久寒者、宜當歸四逆加呉茱萸生薑湯。方四。

若し其の人内(うち)に久寒有る者は、當歸四逆加呉茱萸生薑湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に宜し。方四。

 352条は、前の351条を引き継いだ加減法です。

 非常に長い方剤名ですが、嘔を治す生姜を加えているので、一旦桂枝湯にして、さらに当帰、木通、細辛を加えた上に、さらに気味苦辛熱、嘔して胸満するを主冶する呉茱萸を足したものですね。

 そうすると方剤の意図がはっきりとしてくると思います。

 内に久寒があるとのことですので、素体としてすでに中焦に冷えと水が結んでいいることが分かります。

 脈も中焦で水と冷えが結ばれていることにより、細で絶えんと欲しており、四肢厥寒の他に、頭項項痛、悪寒、頭痛、胸満、嘔吐、腹痛など、気の衝逆症状があってもおかしくない症候が見えてきます。

 四逆湯と当帰四逆加呉茱萸生姜湯を比較すると、四逆湯は生附子が用いられているので、下焦で水が陽気を厳しく阻んでいるのに対して、当帰四逆加生姜湯は、水が中焦で留まり、陽気が上焦に昇らないとも考えることが出来ます。

 相対的に前者が虚、後者が実と診ることもできます。

 逆に言えば、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、中焦の水を散らしながら陽気を一旦上焦に持って行き、全身の気をめぐらそうとする方剤とも言えます。

 大塚敬節は、いわゆる「疝」と称される下腹部痛、足厥陰肝経の証候である生殖器・泌尿器方面の障害に用いて多数著効を得たと述べています。

 鍼を用いるのなら、どうしますでしょう。

 筆者でしたら、中焦の水は下に下ろし、陽気は上に持って行きます。

 目付処は、やはり中焦から心下でしょうか。

 補瀉は、その時々で加減するので一概に言えませんが、上記を参考に選穴・補瀉すれば良いのではないかと考えます。

〔當歸四逆加呉茱萸生薑湯方〕

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩炙) 通草(二兩) 桂枝(三兩去皮) 細辛(三兩) 生薑(半斤切) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚擘)

右九味、以水六升、清酒六升和、煮取五升、去滓、温分五服(一方水酒各四升)。

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩、炙る) 通草(二兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 細辛(三兩) 生薑(半斤、切る) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚、擘く)

右九味、水六升を以て、清酒六升を以て和し、煮て五升を取り、滓を去り、温め分かち五服す(一方に、水酒各々四升とす)。

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