【二七三条】
太陰之為病、腹滿而吐、食不下、自利益甚、時腹自痛。若下之、必胸下結鞕。
太陰の病為(た)るや、腹滿して吐し、食下らず、自利(じり)益々甚だしく、時に腹自ら痛む。若し之を下せば、必ず胸下結鞕(けっこう)す。
いよいよ太陰病に入って参りました。
この237条はすでに触れていますので、参考にして頂けたらと思います。
条文を意訳しますと、「太陰病というのは、お腹が満になって吐き、食を受け付けず自下利が甚だしく、時にお腹が痛む」というものです。
その後に続く「若下之、必胸下結鞕」は、後人の攙入と思われますので、削除してよいと思います。
腹満は陽明病でも現れますが、太陰病の腹満は虚満ですので、望診でもはっきりと確認できます。
なんとなく締まりがないと言いますか、ぼんやりとした感じです。
舌苔は、化熱していなければ白苔です。
そして場合によっては吐いたり、飲食物を受け付けなくなることが記されています。
ここは少陽病との鑑別が必要ですね。(少陰病の正証を思い浮かべてくださいね。)
本条では、「自利が益々激しい」とありますが、虚秘便秘の場合もあります。
その場合は、最初はしっかりした便であっても、最後には緩くなるか泥状便(大便溏)となります。
便の性状のバリエーションは、幅広いですので病理を理解しておいてくださればと思います。
自利している場合は、少陰病・四逆湯類との鑑別が必要です。
この太陰病レベルですと、四肢の厥冷にまで至っていないはずです。
そして時々腹痛するのは、正気が持続的・継続的に邪気に対抗できない姿として理解することが出来ます。
当然、痛みの程度も、そんなに激しくないでしょう。
慢性雑病においても、このような状態が現れることがママあります。
その際、虚実を明確にする必要があります。
下利=虚と単純に捉えないことですね。
274条と275条は、例によって条文と読み下し文のみの掲載です。
【二七四条】
太陰中風、四肢煩疼、陽微陰濇而長者、為欲愈。
太陰の中風、四肢煩疼(はんとう)し、陽微(び)陰濇(しょく)にして長の者は、愈(え)えんと欲すと為(な)す。
【二七五条】
太陰病欲解時、從亥至丑上。
太陰病解せんと欲する時は、亥(い)從(よ)り丑(うし)の上に至る。
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