【二三七条】
陽明證、其人喜忘者、必有畜血。所以然者、本有久瘀血、故令喜忘。屎雖鞕、大便反易、其色必黑者、宜抵當湯下之。方二十四。
陽明の證、其の人喜忘(きぼう)する者、必ず畜血(ちくけつ)有り。然(しか)る所以の者は、本(もと)久しく瘀血有るが故に喜忘せしむ。屎(し)鞕しと雖も、大便反って易く、其の色必ず黑き者は、宜しく抵當湯にて之を下すべし。方二十四。
陽明病ではなく陽明証となっていますが、「胃家実」を目処にしていると考えています。
「喜忘」とは、しばしば、しょっちゅう忘れるという意味です。
大便が硬いと言っても反って通じやすく、その色が必ず黒ければ、これは蓄血証だから抵当湯で下すのが良いと述べられています。
蓄血証は、抵当湯証の病理と同意義です。
抵当湯証については、すでに述べていますのでもう一度見て頂けたらと思います。
太陽病では、瘀熱が下焦に在って心神を上擾して狂症を発していました。
その際、「小便自利するものは、血を下せば乃ち愈ゆる」でした。
本条の場合、大便通利と黒色便を目付処にしています。
さて、なぜ「喜忘」するのでしょうか。
熱は興奮・亢進の性質もありますが、緩慢であれば緩むという性質もあります。
このように考えれば、下焦の瘀熱が緩慢に心神を亡失させるのではと推測することが出来ると思うのですが、みなさまいかがでしょうか。
そうしますと、現代の認知症の中で、下焦の瘀熱証と判断できれば、かなり改善するのではと興味が湧いてきます。
その際、脳の画像診断による状態は、改善しなくてもです。
実際、鍼治療でアルツハイマーの認知症が劇的に改善した症例を持っております。
ここが人間の可能性の大きさですし、不思議さだと思います。
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