ブログ「鍼道 一の会」

151.陽明病 233条 蜜煎導

【二三三条】

陽明病、自汗出。若發汗、小便自利者、此為津液内竭、雖鞕不可攻之。當須自欲大便、宜蜜煎導而通之。若土瓜根及大猪膽汁、皆可為導。二十。

陽明病、自汗出ず。若し汗を發し、小便自利する者は、此れ津液内に竭(つ)くると為す。鞕(かた)きと雖も之を攻むべからず。

當に須(すべから)く大便せんと欲するは、蜜煎導(みつせんどう)にて之を通じるに宜し。若しくは土瓜根(どかこん)、及び大猪膽汁(だいちょたんじゅう)、皆導(どう)を為すべし。二十。

 本条の冒頭に陽明病とありますが、陽明病であるかどうかは疑わしいと考えています。

 自汗若しくは発汗させて、小便が通利していて大便が硬くて出難いのは、下法を用いるべき証でないことを述べていますし、また白虎湯類を用いるべき証でもないことを述べています。

 恐らく傷寒に罹って正治した後にこのような症候が現れたのでしょうが、便秘していても讝語も現れず、ましてや潮熱や身熱、胃家実の腹満、口渇などの陽明病特有の証候が現れていないものと推測されます。

 これは素体として正気虚傾向、若しくは津液不足のもので、大便の頭が硬いだけで後は柔らかい便が出るだろうと思われます。

 このあたりのことを<類聚方広義>から引いてみます。

 「傷寒にして、熱気が極めて盛んで汗が多く出て、小便は自利して津液が多く失われ、肛門中が乾燥して大便が硬くなり出なくなった者。

 及び諸病にして便秘し、嘔吐して薬汁が入らない者。

 老人にして、血液枯燥し、常に便秘し、少腹満にして痛む者。これらは共にこの方を与えるとよい。

 蜜一合を温めて、筒になったもので肛門内に注ぎ入れる方法が、必ずしも正道ではないが、便利なやり方である」とあります。

 247条の麻子仁丸証が思い浮かびますが、どうなのでしょうね。

 テキストには蜜煎とありますが、一般的には蜜煎導と称されているようです。

 蜜煎方をみると、仲景の原方でないだろうことが書かれていますが、現代の浣腸の適応症と言えるのではないでしょうか。

 

〔蜜煎方〕(みつせんほう)

食蜜(七合)

右一味、於銅器内微火煎、當須凝如飴狀、攪之勿令焦著、欲可丸、併手捻作挺、令頭營鋭、大如指、長二寸許。當熱時急作、冷則鞕。以内穀道中、以手急抱、欲大便時乃去之。疑非仲景意、已試甚良。

又大猪膽一枚、瀉汁、和少許法醋、以灌穀道内、如一食頃、當大便出宿食惡物、甚效。

 

食蜜(七合)

右一味、銅器内に於て微火にて煎ず。當に凝(こ)りて飴狀(いじょう)の如くなるを須(ま)ちて、之を攪(かきま)わして焦げ著(つ)かせしむることなかれ。

丸ずべしと欲せば、手を併(あわ)せて捻(ひね)りて挺(てい)と作(な)し、頭をして鋭ならしめ、大きさ指の如く、長さ二寸許(ばか)りにす。當に熱き時に急に作(つく)るべし。冷ゆれば則ち鞕し。以て穀道の中に内れ、手を以て急に抱え、大便せんと欲する時は、乃ち之を去る。疑うらくは仲景の意に非ざるも、已に試みて甚だ良し。

又、大猪膽(だいちょたん)一枚、汁を瀉(そそ)ぎ、少し許(ばか)りの法醋(ほうさく)に和して、以て穀道の内に灌(そそ)ぐ。一食頃(いっしょくけい)の如きうちに、當に大便して宿食惡物(おぶつ)を出だすべし、甚だ效あり。

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