ブログ「鍼道 一の会」

139.陽明病 212条 大承気湯

 【二一二条】

傷寒若吐、若下後不解、不大便五六日、上至十餘日、日晡所發潮熱、不惡寒、獨語如見鬼狀。

若劇者、發則不識人、循衣摸牀、惕而不安(一云順衣妄撮怵惕不安)、微喘直視、脉弦者生、濇者死。

微者、但發熱讝語者、大承氣湯主之。若一服利、則止後服。四(用前第二方)。

傷寒、若しくは吐し、若しくは下したる後解(げ)せず、大便せざること五、六日、上は十餘日に至り、日晡所潮熱(にっぽしょちょうねつ)を發し、惡寒せず、獨語(どくご)して鬼狀を見るが如し。

若し劇しき者は、發すれば則ち人を識(し)らず、循衣摸牀(じゅんいもしょう)、惕(てき)して安(やすら)かならず(一云順衣妄撮怵惕不安)、微喘(びぜん)して直視す。脉弦の者は生き、濇(しょく)の者は死す。

微(び)の者、但だ發熱讝語(せんご)する者は、大承氣湯之を主る。若し一服にて利せば、則ち後服(こうふく)を止む。四(用前第二方)。

 さっと条文に目を通して頂くと、かなり切迫した病態が読み取れるのではないでしょうか。

 この条文、三段に分けて意訳してみます。

①傷寒に罹って表証より裏そ攻めるべき証があったので、吐下を施したが病態は良くならない。

 その後5・6日から10余日便秘が続き、夕方になると発熱するようになっている。

 すでに悪寒は無く、なにやら幻覚を見ているのか独り言をするようになった。

②突然病勢がはげしくなると、人を識別できなくなり衣服や寝具をまさぐるような重篤なしぐさをしている。

 幻覚を見ているためなのか、恐れて安んじていることが出来ず、かすかに喘いでいるが、目は直視して動かない。

 脈が弦であれば助かるが、濇であれば死亡する。

③微で、ただ発熱してうわごとを言うものは、大承気湯証である。

 大承気湯を一服して排便があれば、後服は留め置くのがよい。

 

 以上が条文に沿った意訳ですが、②の脈弦であれば生きるが濇であれば死すというのは、経験が無いのでなんとも言い難いところです。

 そのまま解釈すれば、弦脈は正邪が拮抗している姿で、濇脈は正気が邪気と拮抗できない姿とすると理に合いますね。

 そして③の微ですが、これを脈象とと捉えるか①の証候が軽度であることを示しているのかが分かりにくいのですが、大承気湯で攻下するのですから、やはり脈象ではなく、ただ発熱・讝語だけが見られる軽度な症状と理解するのが妥当だと考えられます。

 しかし攻下するのですから、やはり燥屎は存在しているはずです。

 腹証奇覧翼の図です。大実満で硬い腹証です。

   

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 一方で、下図のように大実満でないものの、燥屎の存在がある場合を現した場合もあり、燥屎の存在が大承気湯の目標になるようです。

 

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 上図の解説文を要約しますと、心下は硬く実満して塊のようで、押さえると実痛。

 そして右の少腹には石を袋に入れたかのような塊が指頭に応ずるのは、燥屎であるとあります。

 また讝語と鄭声を鑑別していまして、讝語とはたわごとを言う者で実。

 勢い無く分かり難くグズグズと小言を言うようなものは、鄭声で虚であるとしています。

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