【一六一条】
傷寒發汗、若吐、若下、解後、心下痞鞕、噫氣不除者、旋復代赭湯主之。方二十三。
傷寒汗を發し、若くは吐し、若くは下し、解(げ)して後、心下痞鞕し、噫氣(あいき)除かざる者は、旋復代赭湯(せんぷくたいしゃとう)之を主る。方二十三。
この条文も、難解なところです。
傷寒に罹って、和法以外の汗・下法を行って、一旦は解けたと言っているのですが、表証の事なのでしょうか。
傷寒に罹ってから解けるまでの日数や病態などは、一切触れられていません。
そして心下が痞鞕してゲップなどの胃の不和の症状があるものには、旋覆花代赭石湯証であると述べられています。
117.太陽病(下)157条 生姜瀉心湯 の症状とよく似ています。
違いは、腹中雷鳴と下利が無いことでしょうか。
腹証奇覧の図を観ても、生姜瀉心湯との明確な違いは分かりません。
方剤構成から見てみてみます。
旋覆花は、中薬学では、消痰降気平喘 降逆止噫に。
新古方薬嚢では、「心下部のつかえを柔らげ、おくびを治す。又心下の痛みを去る。兎に角心下部堅く脹りつかへ他薬にて治し難きものに用ひて効を見る」とあります。
いまひとつ、はっきりとしません。
代赭石を見てみます。
中薬学では、平肝清熱 鎮逆降気 凉血止血。
新古方薬嚢では、「よく熱をとり、ふやけたるを固むるはたらきあり」とあります。
代赭石は、天然の赤鉄鉱ですから、やはり重いので鎮めるといった感じでしょうか。
どちらにしましても、降気に働くようですね。
そして半夏・生姜で痰と水をさばきます。人参は水を集めて心下痞鞕を治します。
甘草・大棗で緊張を緩めると考えてみました。
そして旋覆花と代赭石で降気させるのですから、虚実錯雑ですね。
162条は、原文と読み下し文のみの掲載です。
〔旋復代赭湯方〕
旋復花(三兩) 人參(二兩) 生薑(五兩) 代赭(一兩) 甘草(三兩炙) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)
右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。
旋復花(せんぷくか)(三兩) 人參(二兩) 生薑(五兩) 代赭(たいしゃ)(一兩) 甘草(三兩炙る) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く)
右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り。一升を温服し、日に三服す。
【一六二条】
下後、不可更行桂枝湯。若汗出而喘、無大熱者、可與麻黄杏子甘草石膏湯。方二十四。
下後(げご)、更に桂枝湯を行(や)るべからず。若し汗出でて喘(ぜん)し、大熱無き者は、麻黄杏子甘草石膏湯(まおうきょうしかんぞうせっこうとう)を與(あた)うべし。方二十四。
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