【一四五】
婦人傷寒、發熱、經水適来、晝日明了、暮則讝語、如見鬼狀者、此為熱入血室。
無犯胃氣、及上二焦、必自愈。十一。
婦人傷寒、發熱し、經水(けいすい)適(たまた)ま来り、晝日(ちゅうじつ)は明了(めいりょう)なるも、暮(くれ)れば則ち讝語し、鬼狀(きじょう)を見(あら)わすが如くなる者は、此れ熱血室(けっしつ)に入ると為す。
胃氣及び上の二焦を犯すこと無ければ必ず自(おのずか)ら愈ゆ。十一。
今回は、太陽中風証ではなくて傷寒証に罹って発熱しているのですね。
そしてたまたま来潮したのですが、143条・144条と違って、昼間は正常であるが、夜になると讝語して、鬼のようなものを見るなどという幻覚症状まで現れると述べられています。
おそらくこの讝語も、激しくはっきりと精神異常と分かる支離滅裂なものなのでしょう。
衛気は昼日は体表をめぐり、夜は内に入るのですから夜間に症状がはっきりと現れると理解できます。
61条 乾姜附子湯証の「昼日煩躁不得眠、夜而安静」と真逆です。
これは陽病と陰病の違いとして、ぜひとも覚えておきたいところです。
太陽中風は、自汗がありますのである程度内熱が抜けることが出来ますが、傷寒は無汗ですので出口が塞がっているのですね。
素体として、肝鬱による内熱が盛んだったのかもしれません。
血室に結ばれた邪熱が、心神を犯した証ですね。
胃気と上・中焦が犯されなければ、必ず自然治癒するとしています。
この「犯す」ですが、邪気が犯すのではなく、医師が誤治を犯さなければと筆者は解釈しています。
讝語ですから、陽明腑実の承気湯類かもしれません。
また124条抵当湯証に「其人発狂者」とあります。
また144条に小柴胡湯証の「熱入血室」の病理が説かれている訳ですから、柴胡加芒硝湯や大柴胡湯証が適応するのかもしれませんね。
本条の症候を治療する際には、腹証や兼証を詳らかにする必要があります。
この婦人科シリーズは本条で終わりです。
このシリーズ、<金匱要略・婦人雑病>に入れておいても良いと思いますね。
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