今回新しく登場した薬剤は、甘遂です。
甘遂 気味 苦寒 有毒
中薬学:瀉水除湿 逐痰滌飲 消腫散結
薬徴:水を利するを主る。傍ら掣痛・咳煩・短気・小便難・心下満を治す。
新古方薬嚢:胸腹の留飲を下す。故に之に由る短気、胸腹満、を治す。短気は息切れの事を言ふなり。
大陥胸湯は、僅か三味の峻剤で全て寒薬です。
心下で熱と水が互結して堅くなっている状態を、芒硝で軟らかくして、大量の大黄と甘遂で一気に下す方剤です。
方意は、そんなに難しくないですね。
大陥胸湯は、「一の会」の会員の中で、服用された方もおられると思います。
筆者も、服用してみましたが、下痢が始まるまでの間は瞑眩症状が現れてしばらく寝ていました。
やはり、瞑眩を起こすくらい、威力のある方剤であることをまざまざと体験しました。
しかも下痢は、驚くほどの水様便でした。
大陥胸丸は、大黄、芒硝、葶藶子、杏仁
大陥胸湯は、大黄、芒硝、甘遂
大陥胸丸は、葶藶子と杏仁と協力して水を下に下ろします。
大陥胸湯は、甘遂のみでしかも僅か一銭匕≒1gですが、激しい峻下作用があります。
この薬能からして、大陥胸丸と大陥胸湯の実証のバリエーションと症状の劇易状態が伺えます。
これだけの峻剤を用いるのですから、かなりの実証ですし切迫した状態だと知れます。
腹証奇覧翼の図説では、「卒に診すれば、大承気湯の証に似たり。速やかに下さざれば、死す。危篤の証なり」と記されています。
やはり・・・といった感じですね。
〔大陷胸湯方〕
大黄(六兩去皮) 芒消(一升) 甘遂(一錢匕)
右三味、以水六升、先煮大黄、取二升、去滓、内芒消、煮一兩沸、内甘遂末、温服一升。得快利、止後服。
大黄(六兩去皮) 芒消(一升) 甘遂(かんつい)(一錢匕(ひ))
右三味、水六升を以て、先ず大黄を煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、煮ること一、兩沸、甘遂(かんつい)末を内れ、一升を温服す。快利を得れば、後服を止(とど)む。
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