ここは文も短く簡単な内容なので、意訳は必要ないと思います。
125条では、黄疸が現れています。
【一二五条】
太陽病、身黄、脉沈結、少腹鞕、小便不利者、為無血也。小便自利、其人如狂者、血證諦也、抵當湯主之。六十五(用前方)。
太陽病、身黄(おう)にして、脉沈結(けつ)、少腹鞕(かた)く、小便不利の者は、血無しと為すなり。小便自利し、其の人狂うの如き者は、血證(けっしょう)諦(あきら)かなり、抵當湯之を主る。六十五(用前方)。
身黄は、P121 236条の茵蔯蒿湯にその記載があります。その条文中には「瘀熱在裏」とありますから、無形の邪なのでしょう。
筆者は16歳の時に、肝炎を患ってまさにこの黄疸を発して入院した経験があるのですが、今振り返るとこの茵蔯蒿湯証だったなと思い至ります。
小便も、血尿と間違うほど赤かった記憶があります。
この黄疸、陽黄と陰黄の虚実がありますが、この抵当丸証は陽黄なので明るい黄色を発しています。
また抵当丸証の陽黄は、湿熱が内鬱することで生じるので、素体として元々湿邪を抱えていた人が、瘀血と瘀熱に蒸されて生じた症状だと理解することが出来ます。
そして分かりにくいのが、脉沈結です。
熱が裏に服しているのですから、沈で有力なはずです。
そして結は、凝滞を現しているのだと思うのですが、脈状としては今ひとつはっきりさせることが出来ないのですが、みなさま、どうでしょう。
そして少腹は126条に少腹満とありますから、小腹は鞕から満までの緊張度のバリエーションがあるということですね。
【一二六条】
傷寒有熱、少腹滿、應小便不利、今反利者、為有血也、當下之、不可餘藥、宜抵當丸。方六十六。
傷寒熱有り、少腹滿す、應(まさ)に小便不利すべし、今反って利する者は、血有りと為すなり、當に之を下すべし、餘藥(よやく)すべからず、抵當丸(ていとうがん)に宜し。方六十六。
おそらく、鞕は急なので湯を用い、満は慢なので丸薬を用いるのでしょう。
126条 抵当丸証には、「狂」の文字がありませんので、穏やかな精神状態の悪化という程度なのかもしれません。
そしてこの抵当湯シリーズでは、小便自利と何度も登場しますので、便秘はしていても小便は通利していることが鑑別のポイントであることが分かります。
心下に異常はなくても、下焦の瘀血熱証による精神異常や腫塊に用いることが出来ますね。
127条は、後人の覚書だと思いますので、解説せず原文と読み下し文のみ記載しております。
さて、今回で太陽病中篇は終わりました。
みなさま、大変お疲れさまでした。
まだまだ続きます。淡々と参ります。
〔抵當丸方〕
水蛭(二十箇熬) 蝱蟲(二十箇去翅足熬) 桃仁(二十五箇去皮尖) 大黄(三兩)
右四味、擣分四丸。以水一升、煮一丸、取七合服之。晬時、當下血。若不下者、更服。
水蛭(すいてつ)(二十箇熬る) 蝱蟲(ぼうちゅう)(二十箇翅足(しそく)を去り、熬る) 桃仁(二十五箇皮尖を去る) 大黄(三兩)
右四味、擣(つ)きて四丸に分かつ。水一升を以て、一丸を煮て、七合を取り之を服す。晬時(さいじ)にして、當に血を下すべし。若下さざる者は、更に服す。
【一二七条】
太陽病、小便利者、以飲水多、必心下悸。小便少者、必苦裏急也。
太陽病、小便利する者、水を飲むこと多きを以て、必ず心下悸(き)す。小便少なき者、必ず裏急(りきゅう)を苦しむなり。
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