【一〇七条】
傷寒八九日、下之、胸滿、煩驚、小便不利、讝語、一身盡重、不可轉側者、柴胡加龍骨牡蠣湯主之。方五十七。
傷寒八、九日、之を下し、胸滿、煩驚、小便不利、讝語(せんご)し、一身盡(ことごと)く重く、轉側(てんそく)すべからざる者は、柴胡加龍骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)之を主る。方五十七
例によって少し意訳します。
傷寒に罹って八九日して、下すべき証があったので、これを下した。
ところが胸満、煩驚、小便不利、讝語などの症状があり、全身が重だるく寝返りもできなくなったのは、柴胡加竜骨牡蠣湯証である。
傷寒に罹って八九日して下しているのですから、下すべき証があったことが分かります。
この場合「反」の文字がないので、誤治ではなく正治です。
太陽と陽明の合病・併病だったのかもしれません。
煩驚とは、神経過敏症状などが想定できます。
「不可轉側者」というのは、身体が重くだるくて、寝返りもできない状態です。
P117 219条 白虎湯証(陽明経証)でも「身重、難以転側・・・讝語」とあります。
またP103 174条桂枝附子湯証(太陽と少陰)でも「身体疼煩 不能自転側」とあります。
本条は、柴胡が用いられていますので少陽枢機の不利が関係していることが分かります。
方剤の中身をみると、十二味も配されています。
さらによく見ると、小柴胡湯の加減方であることが分かります。
次回、小柴胡湯と比較して、配剤を通じて病理を解いてみます。
〔柴胡加龍骨牡蠣湯方〕
柴胡(四兩) 龍骨 黄芩 生薑(切) 鉛丹 人參 桂枝(去皮) 茯苓(各一兩半) 半夏(二合半洗) 大黄(二兩) 牡蠣(一兩半熬) 大棗(六枚擘)
右十二味、以水八升、煮取四升、内大黄、切如碁子、更煮一兩沸、去滓、温服一升。本云柴胡湯、今加龍骨等。
柴胡(四兩) 龍骨 黄芩 生薑(切る) 鉛丹(えんたん) 人參 桂枝(皮を去る) 茯苓(各一兩半) 半夏(二合半洗る) 大黄(二兩) 牡蠣(ぼれい)(一兩半熬る) 大棗(六枚擘く)
右十二味、水八升を以て、煮て四升を取り、大黄を切りて碁子の如きを内れ、更に煮て一兩沸し、滓を去り、一升を温服す。本云う、柴胡湯に今龍骨等を加うと。
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