【一〇六条】
太陽病不解、熱結膀胱、其人如狂、血自下、下者愈。
其外不解者、尚未可攻、當先解其外。
外解已、但少腹急結者、乃可攻之、宜桃核承氣湯。方五十六(後云解外宜桂枝湯)。
太陽病解せず、熱膀胱に結び、其の人狂の如く、血自ら下る、下る者は愈ゆ。
其の外解せざる者は、尚を未だ攻むべからず、當に先に其の外を解すべし。
外解し已(おわ)り、但だ少腹急結する者は、乃(すなわ)ち之を攻むべし、桃核承氣湯(とうかくじょうきとう)に宜し。方五十六(後に云う外を解すには桂枝湯に宜しと)。
例によって条文を意訳いたします。
太陽病となって病が解けないだけでなく、熱が下焦の膀胱に結んでしまった。
そうなると人は狂ったかのようになり、下血する。
下血すると狂症は治まる。
しかし表証がまだ残っているようだと、たとえ腑実などの証があっても裏を攻めてはならない。
表証が解けた後、少腹が急結しておれば、之を攻めても良い。
桃核承気湯を用いるのが適切である。
太陽病に罹って、狂ったかのような精神異常が現れるのですから、素体としてはかなり厳しい内熱の存在が想定できます。
ですから、自然瀉血である下血が見られると、内熱が清せられるので狂症は治まるのですね。
それでもなお、表証が存在している場合は、麻黄湯・桂枝湯などで汗を取って表証を解くべきことを述べています。
そして表証を離れたことを確認し、それでも少腹に硬いしこりである急結がある場合、それを目標に下しをかけて攻めるのが良いということですね。
この桃核承気湯、ちょっとこだわって解説したいと思います。
〔桃核承氣湯方〕
桃仁(五十箇去皮尖) 大黄(四兩) 桂枝(二兩去皮) 甘草(二兩炙) 芒消(二兩)
右五味、以水七升、煮取二升半、去滓、内芒消、更上火微沸、下火。先食温服五合、日三服、當微利。
桃仁(五十箇去皮尖) 大黄(四兩) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 芒消(二兩)
右五味、水七升を以て、煮て二升半を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上(の)せ微沸(びふつ)し、火より下ろす。食に先だちて五合を温服し、日に三服す、當に微利(びり)すべし。
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