〔小建中湯方〕
桂枝(三兩去皮) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘) 芍藥(六兩) 生薑(三兩切) 膠飴(一升)
右六味、以水七升、煮取三升、去滓、内飴、更上微火消解。温服一升、日三服。嘔家不可用建中湯、以甜故也。
桂枝(三兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 大棗(十二枚擘く) 芍藥(六兩) 生薑(三兩切る) 膠飴(こうい)(一升)
右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、飴を内(い)れ、更に微火(びか)に上(の)せて消解し。一升を温服し、日に三服す。嘔家(おうか)は建中湯を用うべからず。甜(あま)きを以ての故なり。
桂枝湯と小建中湯の配剤構成を比べてみます。
桂枝湯:桂枝三両、甘草二両、大棗十二枚、芍薬三両、生姜三両
小建中湯:桂枝三両、甘草二両、大棗十二枚、芍薬六両、生姜三両、膠飴
このように比べてみると、小建中湯は、桂枝湯に芍薬3両を追加し、膠飴を加えたものというのが一目瞭然です。
この小建中湯の配剤を筆者なりに解釈してみます。
目付は、加味された芍薬と膠飴ですね。
芍薬、気味酸微寒、薬徴では「結実して拘攣するを主治する」とありますので、腹壁は筋張って緊張していることが分かります。
そして膠飴は、気味甘温、新古方薬嚢では、「急を緩め力を与ふ。故によく裏急を治し腹痛を和す。」とあります。
この膠飴なのですが、蜂蜜など他の甘味の剤と働きがどのように違うのでしょうね。
蜂蜜は、ご存知の通り、液体で粘性があります。
膠飴は、麦芽由来の堅いあめ玉、個体です。
小建中湯方に記載されていますように、膠飴を湯液に溶かし込むわけです。
すると腹中では、個体としての働き=より求心性として働くのではないでしょうか。
つまり諸薬を、中焦に長く留め置くと同時に散じてしまわないようにする働きです。
今度は、腹証奇覧翼の図を掲載します。
図に、腹皮拘急とあります。
虚証であっても、このように緊張した腹症があるということですね。
P78 【一〇二条】
傷寒二三日、心中悸して而煩者、小建中湯主之。五十二(用前第五十一方)。
傷寒二、三日、心中悸して煩する者は、小建中湯之を主る。五十二(前の第五十一方を用う)。
102条に心中が動悸して煩する者は、小建中湯之を主るとありますから、この図は、そのまま描いていますね。
100条からの流れですと、傷寒・中風の証が備わっていても、動悸がして煩があれば、汗を取る前に小建中湯で裏虚を補うべきであることを言っているのだと思います。
それに、全体にやせ型です。
まさに太陰が病んでいる状態ですね。
P283<金匱要略・血痹虛勞病>
【15条】
虛勞裏急,悸,衄,腹中痛,夢失精,四肢痠痛,手足煩熱,咽乾口燥,小建中湯主之.
この条文では、出血のほか寝ている間に精液が漏れ出てしまうという固摂失調症状も記載されています。
また手足煩熱とありますから、虚証であっても四肢厥冷はありません。
しかも「咽乾口燥」とありますから、煩熱があっても口が乾くだけであまり飲みたがらない様子がうかがえます。
普段からの患者の素体を熟知しておくべきですね。
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