【一〇〇条】
傷寒、陽脉濇、陰脉弦、法當腹中急痛、先與小建中湯。不差者、小柴胡湯主之。五十一(用前方)。
傷寒、陽脉濇、陰脉弦、法は當(まさ)に腹中急痛すべし。先ず小建中湯を與う。差(い)えざる者は、小柴胡湯之を主る。五十一(前方を用う)。
まず条文を意訳してみます。
傷寒に罹り、軽按すると脈が渋っており、按じると弦脉で ある場合、当然腹中が引き攣ったように痛むものであるから、少陽病の症状を兼ねていても、まず小建中湯を服用させなさい。
その上で、太陽と少陽を治療するのなら、小柴胡湯を用いるのである、といった感じでしょうか。
三陽の合病もしくは併病でしたら、小柴胡湯を与えるのでした。
今度は、太陰病を兼ねている場合です。
ややっこしいですねぇ。
小建中湯証であるか小柴胡湯症であるかの鑑別は、脈だけでは難しいのではないかと思われます。
小建中湯は、太陰病位の湯液で、以前桂枝湯のところで少し触れていますので参照してみてください。
ちなみに、小建中湯は桂枝湯の芍薬を倍加し、膠飴を加えた配剤となっています。
元々気血虚弱で太陰病質であった人が、傷寒に罹ってしまった場合、先ず小建中湯で扶正してから、少陽枢機を和解させなさいということだと思います。
では、元々太陰病質の方は、どのような状態なのでしょう。
P130 273条 太陰病綱領
【二七三条】
太陰之為病、腹滿而吐、食不下、自利益甚、時腹自痛。若下之、必胸下結鞕。
太陰の病為(た)るや、腹滿して吐し、食下らず、自利(じり)益々甚だしく、時に腹自ら痛む。
太陰病というのは、お腹が満になって吐き、食を受け付けず自下利が甚だしく、時にお腹が痛む、というものです。
当然、脈も虚弱です。
100条では、273条の太陰の綱領に加えて、太陽表証と少陽の症状があるので、ややこしいですよね。
そこでこのような場合、まず正気を立て直す必要がある訳ですね。
ここは、問診力が要りますね。
腹証奇覧から、小建中湯証の図を挿入しました。
色々と、イメージしてください。
次回、小建中湯の方意をやります。
なお、101条は後人の覚書の攙入と思われますので、原文と読み下し文のみ記載しております。
〔小建中湯方〕
桂枝(三兩去皮) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘) 芍藥(六兩) 生薑(三兩切) 膠飴(一升)
右六味、以水七升、煮取三升、去滓、内飴、更上微火消解。温服一升、日三服。嘔家不可用建中湯、以甜故也。
桂枝(三兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 大棗(十二枚擘く) 芍藥(六兩) 生薑(三兩切る) 膠飴(こうい)(一升)
右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、飴を内(い)れ、更に微火(びか)に上(の)せて消解し。一升を温服し、日に三服す。嘔家(おうか)は建中湯を用うべからず。甜(あま)きを以ての故なり。
【一〇一条】
傷寒中風、有柴胡證、但見一證便是、不必悉具。凡柴胡湯病證而下之、若柴胡證不罷者、復與柴胡湯、必蒸蒸而振、却復發熱汗出而解。
傷寒、中風、柴胡の證有るは、但だ一證を見(あらわ)せば便ち是なり、必ず悉(ことごと)く具えず。凡そ柴胡湯の病證にして之を下す。若し柴胡の證罷(や)まざる者は、復た柴胡湯を與う、必ず蒸蒸(じょうじょう)として振い、却(かえ)って復た發熱し汗出でて解す。
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