【四二】
太陽病、外證未解、脉浮弱者、當以汗解、宜桂枝湯。方十二。
太陽病、外證(がいしょう)未だ解(げ)せず、脉浮弱の者は、當(まさ)に汗を以って解(げ)すべし、桂枝湯に宜し。方十二。
短い条文ですが、表証ではなく外証と表現されています。
この外証とは、いったい何を指しているのでしょう。
太陽病ー表証
少陽病ー半表半裏
陽明病ー裏証 ですね。
ところが、外証・内証となるとどうなのでしょう。
ここは大塚敬節著(1900-1980)「傷寒論論解説」創元社に答えを求めました。
「外証とは、表証によって生じた裏証を含めた概念で、外証の有無は、下剤の適不適応を決める大切な目標である」と述べられています。
テキストP130.273条をみてください。
太陰病の綱領です。
【二七三条】
太陰之為病、腹滿而吐、食不下、自利益甚、時腹自痛。若下之、必胸下結鞕。
太陰の病為(た)るや、腹滿して吐し、食下らず、自利(じり)益々甚だしく、時に腹自ら痛む。若し之を下せば、必ず胸下結鞕(けっこう)す。
この条文には、錯簡があると思いますので、「自利益甚」を移動して並べ替えてみます。
太陰之為病、腹滿而吐、食不下、時腹自痛。若下之、自利益甚、必胸下結鞕。
この条文中の「腹満、吐、食下らず、時に腹痛」が太陰病の綱領です。
そして以下の276条では桂枝湯。
279条では桂枝加芍薬湯と桂枝加大黄湯が挙げられています。
【二七六】
太陰病、脉浮者、可發汗、宜桂枝湯。方一。
太陰病、脉浮の者は、汗を發すべし、桂枝湯に宜し。方一。
【二七九】
本太陽病、醫反下之、因爾腹滿時痛者、屬太陰也、桂枝加芍藥湯主之。大實痛者、桂枝加大黄湯主之。三。
本(もと)太陽病、醫反って之を下し、爾(そ)れに因りて腹滿し、時に痛む者は、太陰に屬するなり。桂枝加芍藥湯(けいしかしゃくやくとう)之を主る。大いに實痛する者は、桂枝加大黄湯(けいしかだいおうとう)之を主る。三。
太陰病証が現れても、桂枝湯が基本方剤となっています。
これは、意味深長だと思います。
上焦と中焦の相互関係・相互交流を、イメージするとよく理解できると思います。
これらの事から、大塚敬節が主張するように、腹満・便秘など、一見して陽明病と見間違う症候が現れた時に、下すべきなのか汗を取るべきか、明確に判断する必要がある訳です。
外証の概念についてまとめますと、素体として脾気虚傾向であったものが太陽病に罹り、そのために裏の気機が失調して現れた症候と表証を含めた証であるということですね。
これらのことを踏まえて、再度42条を意訳してみます。
太陽病に罹り、表証と腹満・便秘などの裏証が現れ、脈浮弱である。
これは表証により、裏が影響を受けて現した虚の状態であるから、発汗解肌させると表証だけでなく、自ずと裏が回復し、腹満・便秘も解消し、脈力も有力となって来るであろう。
279条は、医師が過誤しやすい状態なのでしょうが、解説は太陰病で行います。
次回、42条を踏まえたうえで43条から解いて参りたいと思います。
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