まずは大青龍湯の方剤構成を見てみます。
〔大青龍湯方〕
麻黄(六兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(二兩炙) 杏仁(四十枚去皮尖) 生薑(三兩切) 大棗(十枚擘) 石膏(如雞子大碎)
右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、取微似汗。汗出多者、温粉粉之。一服汗者、停後服。若復服、汗多亡陽、遂(一作逆)虛、惡風、煩躁、不得眠也。
麻黄(六兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 杏仁(四十枚、皮尖を去る) 生薑(三兩切る) 大棗(十枚擘く)石膏(雞子大(けいしだい)の如く碎(くだ)く)
右七味、水九升を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じて、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、微しく汗に似たるを取る。
汗出ずること多き者は、温粉(おんふん)もて之を粉(はた)く。一服にて汗する者は、後服を停(とど)む。若し復た服すれば、汗多く亡陽(ぼうよう)し、遂に(一作逆)虚し、惡風、煩躁し、眠るを得ざるなり。
最初に大青龍湯の基本方剤である、35条の麻黄湯と比べてみましょう。
麻黄湯 麻黄3両 桂枝2両 炙甘草1両 杏仁70個
大青龍湯 麻黄6両 桂枝2両 炙甘草2両 杏仁40個 生姜3両 大棗10枚 石膏雞子大
麻黄が倍量の6両ですから、大瀉法だと分かります。
それに加えて清熱剤の石膏が加えられていますので、胃熱と口渇が存在しているので、水もたくさん飲んでいるはずです。
<金匱要略・水気病>の越婢湯を見てみましょう。
麻黄6両 石膏半斤 生姜3両 大棗15枚 甘草2両(生)となっています。
別の見方をすると、大青龍湯は越婢湯に桂枝と杏仁を加えたものであることが分かります。
このことから、大青龍湯は水気を意識した方剤であることが分かります。
ですから、むくみが出ている場合もあるかもしれません。
少なくとも肩背部の肌は、緊張して分厚く感じ取れます。
さらに生姜で胃気を和し、大棗で腹部の緊張を緩め、杏仁で胸間の停水をさばく。
肌表で水と熱と表寒がせめぎあい、内外共にうっしているので煩躁も現れます。
総じて大青龍湯は、外寒裏熱を、大いに発汗させることで表裏同治させる方剤であることが分かります。
どのくらい発汗が予測されるかというと、大青龍湯方に「温粉もて之を粉く」と大量の汗を取るための方法を記しているのですから、それこそ「水が流離するが如く」汗が大量に出るのでしょう。
さて、ここでみなさま「青龍」ってどこかで目にしたことがありませんでしょうか。
四神の内、東に位置する青龍ですね。
八卦は、震雷ですね。
上の二陰(寒邪と水邪)に抑えられて、下の一陽が出て行こうとする姿とも言えます。
まさに肝の昇発のイメージですね。
鍼だと上の二陰を開いてやれば言い訳です。
麻黄湯を意識すれは上焦のかかる要穴に瀉法でしょう。
裏熱に関しては、生姜・杏仁・石膏を意識すれば、例えば内関や列欠などを瀉法といったところでしょうか。
もちろん、素体の状態によって他の経穴なども選穴の視野に入れることもできますので、病理機序と切診をマッチングさせて、刺鍼前にどのような反応を起こさせたいかを明確に意図することが重要です。
【三八】
太陽中風、脉浮緊、發熱、惡寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之。若脉微弱、汗出惡風者、不可服之。服之則厥逆、筋惕肉瞤、此為逆也。大青龍湯方。
太陽中風、脉浮緊、發熱、惡寒し、身疼痛し、汗出でずして煩躁する者は、大青龍湯之を主る。
若し脉微弱、汗出で惡風する者は、之を服すべからず。之を服すれば則ち厥逆、筋惕(きんてき)肉瞤(にくじゅん)し、此を逆と為すなりなり。大青龍湯方。
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