【三六】
太陽與陽明合病、喘而胸滿者、不可下、宜麻黄湯。六(用前第五方)。
太陽と陽明の合病、喘(ぜん)して胸滿する者は、下すべからず、麻黄湯に宜し。
太陽と陽明の合病ですので、邪の勢いが非常に強かったのか、もしくは素体として内熱・便秘傾向であったと想定できるのではないでしょうか。
今回、改めて「傷寒論」を読み進めていて思うことは、外邪を感受する前の素体の状態を意識するようになったことです。
そもそも太陽病位から陽明病位に伝変するのは、邪が内陥したという見方も出来ますが、内熱が表症によって出口を失い、鬱して陽明病を発するのではないかと考えるようになっています。
そこに水であるとか気滞であるとかが加わり、単純に標準化できない病態を演出してしまうのだと考えています。
これは少陽、太陰、少陰、厥陰なども同じです。
この36条では、「下すべからず」とあり、治療原則の先表後裏、つまり表を解いてから裏実を下さいなさいということでしょう。
では、合病であっても、先に裏実を救うべき状態とは、どのような症候が現れた時なのでしょうか。
ここ、これまでの臨床でよく迷ったところです。
テキストP114を見てください。
調胃承気湯、小承気湯、大承気湯のバリエーションが並んでします。
そのうちの208条、大承気湯証の条文中に「脉遅」と記載されています。
非常に高い熱を発しているにも関わらず「脉遅」です。
これは常と変でいうと、変です。
陽が極まって陰の脈に転化した状態ですね。
このような「変」の脈象は、日常の臨床でよく目にしますので、くれぐれも脈象だけで虚実を判断して、誤らないように気をつけてくださいね。
大承気湯証のように大実満でしかも「脉遅」となれば、先ず裏を救ってから後、改めて表証を按じ法を以ってこれを治し、解肌します。
この38条に、喘ぎと胸満と記述されていますが、病理はもうお分かりですね。
ジョギングや階段を一気に駆け上ったときに現れる、呼吸の状態が喘ぎです。
さらに胸が詰まっていっぱいになると、胸満です。
ここには書かれていませんが、心下も詰まっていっぱいになっているはずです。
喘ぎは基本的に熱で現れますが、これに水が関係すると呼吸困難となります。
麻黄湯で肌表を開いて、熱と水を汗として発すると喘ぎと胸満は治まるはずです。
その後、陽明病証が残っていないかどうかを確認してから、さらに治療を行うのですね。
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