喘ぎと自汗の病理を理解するために、黄連と黄芩の薬能から解いて参ります。
黄連 気味 苦寒 燥湿清熱
薬徴:心中煩悸を主るなり。傍ら心下痞、吐下、腹中痛を治す。
増補薬能:心熱を去る。
黄芩 気味 苦寒 燥湿清熱
薬徴:心下痞を主治す。兼ねて胸脇満、心煩、嘔吐、下痢を治するなり。
葛根 気味 甘微寒
葛根は、桂枝加葛根湯のところで述べましたように、胃熱を冷まし、津液を項背・肌表に到達させる働きでした。
黄連と黄芩、共に色も黄色でとても苦い寒薬です。
黄連は、心中煩悸ですので膈より上、胸中に熱があることが分かります。
黄芩は心下痞で胃腸症状に有効ですので、膈より下の熱を清して下痢を止める薬能があることが分かるのではないでしょうか。
まとめますと、陽明腑実を思わせるような桂枝湯証を誤って承気湯類を用いたところ、下痢が治まらず、促脈であり、しかも表証が残っている。
しかしまだ下痢は実利の状態であるけれども、時間経過とともに虚に転じるので下痢を止める必要がある訳ですね。
黄連・黄芩のペアは、瀉心湯類で用いられていますので、心下から胸にかけて湿を挟んで熱が充満しているだろうと想定できます。
そしておそらく内熱が表にまで達して項背も強ばっているのでしょう。
そして上焦と中焦に熱が残り、しかも下痢と発汗で津液までも不足してしまった。
そこで葛根で胃熱を冷ましつつ津液を肌表に到達させ、項背のこわばりを解くと同時に、黄連と黄芩で上・中焦を清熱利湿したところ、喘ぎと自汗がようやく治まったと考えることが出来ます。
表がまだ解けていないと条文にありますがどうなのでしょう。
麻黄・桂枝などの発表剤は用いられていませんので、表寒の邪は存在していないはずです。
もし悪寒が存在していたとしても、裏熱が浮いた表熱によるものでは無いかと思います。
方剤構成からすると、おそらく下法によって邪が内陷して化熱し、素体として元々持っていた湿熱と結んで下痢を起こし、内熱が上焦の肌表まで及んだことによる喘ぎと自汗だと考えるとすっきしとします。
これを鍼で行うとすると、清湿熱が中心となりますね。
黄連、黄芩だと上・中焦の熱。
腹診だと心下部あたりを目付にして、督脈上の経穴や下焦の経穴などを目当てに補瀉してはどうかと考えますが、諸先生方、いかがでしょうか。
三四.太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、脉促(促一作縱)者、表未解也。喘而汗出者、
葛根黄芩黄連湯主之。方四。
太陽病、桂枝の證、醫反って之を下し、利遂に止まず、脉促の(促一作縱)者は、表未だ解(げ)せざるなり。喘(ぜん)して汗出ずる者は、葛根黄芩黄連湯(かっこんおうごんおうれんとう)之を主る。方四。
〔葛根黄芩黄連湯方〕
葛根(半斤) 甘草(二兩炙) 黄芩(三兩) 黄連(三兩)
右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸藥、煮取二升、去滓、分温再服。
葛根(半斤) 甘草(二兩炙る) 黄芩(おうごん)(三兩) 黄連(三兩)
右四味、水八升を以て、先ず葛根を似て、二升を減じ、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。
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